勝新太郎追悼座談会

勝新太郎追悼座談会(STUDIO VOICE MARCH 2007 VOL.375 より)

勝新太郎追悼座談会(STUDIO VOICE MARCH 2007 VOL.375 より)

康芳夫(メディア・ミックス全権プロデュサー)×湯浅学(勝新太郎原理主義者)×藤本友徳(KANOXディレクター)×太田敬一郎(元EPIC SONYディレクター)

藤本 上下左右なかったんですよね。だから僕なんかが会いに行っても、普通大物と言われる人は「お前、今までどんな仕事して、どこに所属してるんだい」っていう話になるわけだけど、勝先生の場合そういうことが全くなくて「こんな企画をここに持ってきたお前が全てだ」っていうスタートなんですよ。そういう発想が、自分で映画をやる際の、いわゆる”虐げられた人間が本当の悪を切ってゆく”という役の基本になっていて、かつそれが、勝新太郎という一つの集合体を作ってたんじゃないかな。この人は芸人として役をやり続け、その役が自分になってるんだと思いましたね。

康 うん、本人もどこまでが「虚」でどこまでが「実」か意識してなかった。その渾然一体のマージナル・ラインが絶妙なんだよね。

湯浅 マリファナって還暦までにやめてたの?『俺・勝新太郎』には還暦までにやめるみたいなこと書いてたけど。

藤本 僕なんかには「お前絶対やるなよ」って言って、でも「やってからやめるのもいいぞ。やらないでダメだとか言っちゃいけねえ」とかわけわかんないんですよ。でも、晩年はやってなかったんじゃないかな。一緒に御飯食べに行っても、タバコも酒もセイヴしてましたからね。

康 アメリカに撮影に行った時、日本人の取り巻きみたいなのが一杯来て、あらゆる薬物を持ってくるの。でも彼は薬物には興味なかったけどね。薬物、つまケミカル系には馴染まなかったと思うよ。

湯浅 いや、いらないでしょう。体内薬物が出ちゃうような人だから。

・・・次号更新に続く