『家畜人ヤプー』秘話-沼正三氏の死に際し:康芳夫(談話)・・・6【新潮(2009年2月より)】

『家畜人ヤプー』秘話-沼正三氏の死に際し:康芳夫(談話)・・・新潮(2009年2月)

『家畜人ヤプー』秘話-沼正三氏の死に際し:康芳夫(談話)・・・新潮(2009年2月)

渡部直己君が『不敬文学論序説』を書いたとき、「なんで『家畜人ヤプー』を論じなかったんだ」って言ったら、彼はきちんと答えなかったけれど、『家畜人ヤプー』は公刊されたものとしては、日本で数少ない反天皇制文学です。これ以外には深沢七郎の『風流夢譚』と大江健三郞の『セブンティーン』、桐山襲の『パルチザン伝説』があるくらいですよ。僕は『家畜人ヤプー』こそが反天皇制文学の極北だと思うんだけど、その後、右翼がこないというのが不思議でね。はっきりいって右翼は不勉強だ(笑)。

まあ、沼さんの夜の顔については、凄まじいことがいっぱいありましたよ。女便所の肥溜めに忍び込んで、消毒液で全身を火傷したりね。SMクラブでの奇行なんかは数え切れない。倉橋由美子君の『マゾヒストM氏の肖像』のモデルは彼です。沼さんは倉橋君の愛読者で、実際に二人は会っています。

・・・次号更新に続く