人間の思考の到達点、その先を絵で描きたい―康芳夫×漫画家・荒木飛呂彦が語る

人間の思考の到達点、その先を絵で描きたい―康芳夫×漫画家・荒木飛呂彦が語る

人間の思考の到達点、その先を絵で描きたい―康芳夫×漫画家・荒木飛呂彦が語る

自らを虚業家と呼ぶプロデューサー・康芳夫監修の書籍『虚人と巨人 国際暗黒プロデューサー康芳夫と各界の巨人たちの饗宴』が辰巳出版より9月1日に刊行された。本書は、康芳夫のライターでもある著者・平井有太マンが康芳夫と著名人達を追い続けた関連記事を厳選して編纂。新規原稿も大幅に増強しており、虚人と巨人の思想を知ることができる本だ。

『虚人と巨人』は全4部構成となっており、第1部は対談集「虚人と巨人たち」。建築家の磯崎新と1957年に建てられた彼の処女作「新宿ホワイトハウス」をめぐる逸話から2020年の東京オリンピックを巡る問題までを語った対談や、実業家の堀江貴文と「ヒトクローン計画」をはじめとするお互いの興味を宇宙的規模まで広げ語り合うテキストなどを収録。第2部の「虚人、巨人を語る」では、交友のあった各界の著名人について回想。三島由紀夫を「ラディカルで反体制的作家」だと形容し、麻原彰晃を「破壊変革をしたかったんでしょう」と分析。また出版を手掛けた『家畜人ヤプー』の原作者・沼正三については「彼は、完全な性欲異常者だった」と述べている。

さらに第3部の「巨人、虚人を語る」では、「僕が康さんから学んだのは『テレビは見世物小屋の延長である』ということ」と述懐するテリー伊藤をはじめ、五木寛之、島田雅彦らが独自の観点で康芳夫という人物像を語っている。最後の第4部では「自分を右も左も、全てを統括してその上に立ってると思ってる」など、康芳夫が自身を語ったインタビューを収録している。

webDICEではこの本の第1部「虚人と巨人たち」から、「ジョジョの奇妙な冒険」などで知られる漫画家の荒木 飛呂彦との対談を一部抜粋して掲載。ふたりの交流、そして「善と悪の規定」をテーマに表現へ向かう姿勢が語られている。

赤ふとアンダー:第1部 虚人と巨人たち 康芳夫×荒木飛呂彦(漫画家)・・・生命の神秘 より一部抜粋

──お二人の出会いはいつだったんですか?

荒木 確か2002年だったと思います。当時「変人偏屈列伝」というシリーズを描いてまして、そこに登場していただくために、一方的に取材させていただいたんです。

康 荒木さんは、当時と印象が本当に変わらないですね。

──康さんを描こうと思った理由は何だったんでしょう。

荒木 物語を描く時に、僕は登場人物の「動機」を大事にするんです。なぜボクサーになったのか、その人の子供時代にまで遡って、原点を知りたいんです。世界には「どうしてこんなことをするのか?」と特に強く思ってしまう、漫画に相応しい「変人」がいるんですが、日本にはなかなかいません。社会とか組織とか、自分を貫くことが難しい環境なんでしょうね。そんな中で、こういったら失礼というか僕としては褒め言葉なんですが、康先生はまさに「変人」だったんです。ルックスも怪しい感じでしたし(笑)。

──康さんの存在を知った、きっかけは何ですか?

荒木 子供の頃に「ネッシー」とか「オリバー君」をテレビで観てはいたんですよ。それを仕掛けたのが康先生だったというのを荒俣宏さんが書かれた著書や康さんの自伝を読んで知ったんです。

康 荒俣君もね、僕のところにきて取材してましたね。

荒木 僕の中で「変人」の必要条件は「ブレない」ことなんです。1~2年だけ変わったことをして目立っても、それは「一発屋」でしかないですから。一生ブレずに貫くことが本当に難しいことだと思うし、そこがすごい魅力なんです。

康 大変失礼なんですが、僕は当時、荒木さんの作品を詳しくは読んでいなかったんですよ。その後、取材をきっかけに色々調べさせていただいて。今回の対談に荒木さんを指名させていただいたのは「ジョジョの奇妙な冒険」という長編シリーズには大きな問題を孕んでいると思ってね。根本的な世界観というか、ある種の黙示録を感じるんです。すべてを読ませていただいたわけではないんですが、「ジョジョ」には「スタンド」という存在が出てきたり、いろいろな「善人」と「悪人」が出てきたり・・・・・・主人公も、善と悪の2人を立てていますよね?

荒木 そうですね。

康 善と悪の規定が、これからそれを超えた境地に辿り着くのか?それとも同じように対立を繰り返すのか?そこら辺が重要な問題だと思うんです。

荒木 おそらく康先生と共通だと思えるのが、まず「謎を知りたい」という気持ちがあることです。ネッシーがいるのかとか、子供の頃から「謎」を知りたがる性格でした。大人になると「謎」の質が少し変わってきて、たとえば「善と悪の境界線はどこにあるんだろう?」といったものが「謎」になったりする。そういうものを、永久に解らないままなのかもしれませんが、描いていきたいんです。超能力という言葉だけでは片付けられない、物理的に説明できない領域ってあるじゃないですか?それを読者に具体的に示したいと思ったのが「スタンド」という絵による表現になったんです。それ以外では「光」も絵で描きたいですし、善と悪というのも、どこからが善で、どこまでが悪という問題じゃなくて、白があれば必ず黒がある、という「二元性」が存在しているということを描かざるをえないんです。

・・・続きは 人間の思考の到達点、その先を絵で描きたい―康芳夫×漫画家・荒木飛呂彦が語る(webDICE)