THE NEW YORK TIMES

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“You cannot,”says the author,”make a place for yourself in the monster-hunting world without at least one sighting of Nessie,preferably accompanied by photo-graphs taken with the wrong film in bad light.”At top,a Japanese diver in Loch Ness.Ahove,Yoshio Kou beside the lake.At right,a 1961″photograph.”

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『ニューヨーク・タイムズ』で大特集

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常識的な生き方はもう捨てた方がいい

現代社会に生きる誰しもが今、日増しに感じている確かなことが一つあると思う。それは自分たちを取り囲んでいる世界がいつ姿を根底からがらりと変えるかわからない、私たちは実はそんな薄氷の上に乗っかっているのではないかということである。

サブプライム問題に端を発する急激な世界的金融不安と大幅な景気後退は、そんな気分にあまりうれしくない手ごたえを与えてくれた。情報や人やモノが凄まじい勢いでグローバルにつながってしまった世界では、ちょっとした揺れが瞬く間に思いもよらぬ大地震になってしまうような現象がこれからいくらでも起きてくると思う。

不安のもとはそれだけではない。昨今多発する社会的モラルの片鱗も何もない企業犯罪や、従来の常識では測れない不気味な犯罪は、普通の生活者を被害妄想に絶えず駆り立てかねないような空気を醸成している。

このような不安な状況にフォーカスを当てて何かを言い立てることは、ちょっと前までは世間の不安を煽って面白がる性分の持ち主かそれを商売に利用しようという輩がするものと相場が決まっていた。しかし、ミレニアムが変わってはや一〇年だ経とうとしている今日において、それはまさに誰しもがふつうに目撃し認めざるをえない当たり前の現実となってしまったのではないだろうか。

・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋