異端の肖像「虚業の狭間で」:東京新聞(2002年(平成14年)5月2日 木曜日)

異端の肖像「虚業の狭間で」:東京新聞(2002年(平成14年)5月2日 木曜日)

見えない道を見つけられるか?

誰しも、自分の人生の歩みは、あちこちに曲がりくねった自分だけの道を歩んでいるようなものだと思っているはずだ。しかし、私から見れば誰しも通れるただ一本の大きな道をみんなが歩いているようにも思える。つまり、すでに大勢の人が歩いている常識という名の出来合いの道を先祖や親や教師から与えられて歩いているに過ぎないのではないか、そんな気がするのである。

自分だけの本当の道というのは、まったく誰からも用意されることのないものである。自分の感性だけを頼りに手探りで進み、その後にできるのが本当の自分の道ではないか。ということは、本来、誰にとっても前方に道というものはないはずなのだ。

今多くの人々の意識に起こりつつあることは、自分たちがこれまで安心して通ってきた出来合いの道が、実は実体も根拠もないものではないかという恐れにも似た気づきではないだろうか。

つまり信頼していた価値観が万人に与えられた幻のようなものだと気づき始めたものの、それを認めてしまうのは怖い、そんな気分がうっすらと蔓延しているような感じがする。

もし、そのような気分をどこかに抱えているのなら、どうすれば自分だけの道を見つけ、歩んでいけるのか、具体的に考え行動していくべきだろう。

・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋