拝聴 康芳夫先生「神を呼ぶ男」:Fukujin N0.11 2006

拝聴 康芳夫先生「神を呼ぶ男」・・・20

拝聴 康芳夫先生「神を呼ぶ男」:Fukujin N0.11 2006

康 福田は彼が最初『奇妙な廃櫨』を書いた時、そこに僕が昔から興味を抱いていたことが詳しく触れられていたので、一度是非会いたいと思っていたの。僕は彼の親友のお父さんと仲がいいわけ。ある有名な実業家なんだけどね。結婚式で初めて会ったの。高校大学の彼の親友のね。そのときは『日本の家郷』で三島由紀夫賞取った直後でね。最初接触したころ、彼と少し厄介な問題が発生したのはね、「ハイデッガーとナチズム」に関してなの。これはそもそも中沢新一に僕がプロポーズしてたテーマなの。彼も当初はすっかりのって、ぜひ僕にやらせてくださいって。でも、中沢が途中で厄ネタだと思ったのか逃げ出したの。そしたらオウム事件が起きてね。彼もいろいろ巻き込まれる形で結局書けなくなってしまった。いきさつとしては最初から福田和也に依頼すればよかった訳だが、当時彼と接触がなかったのでわずかなタイミングのずれがあった。然し、『批評空間』は柄谷、浅田のホームグランドでもあったので当初二人ともこの企画には乗り気ではなかった。勿論そこには中沢から福田に替わったという問題がある。福田は快く引き受けてくれたが、書いてるうちに極めて厄介なテーマと思ったのか原稿がなかなか書き進まなくて何回も中断して、やっと四回やったところで『批評空間』が休刊になってしまった。僕は、「ハイデッガーとナチズム」という二十世紀最大の哲学的ブラックホールは福田なら解明できると確信しています。哲学としてのナチズムという問題は厳然として残っている。歴史的、社会的に極めてグロテスクな結末をむかえたナチズムの根底にある思想としてのナチズムの是非を問うべきだ。みんなハイデッガーがナチズムに入ったかどうかなんてクソみたいな話をやってるわけだよ。入ったに決まってる。何故かが問題なのだ。今、ハイデッガー研究者の木田元っているだろ?彼はとんでもなく間抜けで彼ではこの問題にまったく対応できない。そもそもふれようとさえしないではないか。

櫻木 康さんがやるしかない。

康 いやいや僕がやるんじゃなくて。

南 何で福田にさせようとしたの(笑)?

・・・以上、拝聴 康芳夫先生「神を呼ぶ男」:Fukujin N0.11 2006 より抜粋

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