小説 沼正三【著:嵐山光三郎】:風俗奇譚 昭和45年7月臨時増刊号より

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家畜人ヤプー倶楽部(家畜人ヤプー全権代理人 康芳夫)配信予告

2015.10.05発行 NO:0023

退化する歓喜---ヤプーの三角(トライアングル)について 荒俣宏(1992
年(平成四年)~発行 家畜人ヤプー(太田出版版)より)

小説 沼正三【著:嵐山光三郎】:風俗奇譚 昭和45年7月臨時増刊号より(
本メルマガ連載(完結編)・・・掲載底本(現在入手困難)『小説 沼正三(
著:嵐山光三郎)』PDFダウンロード特典有り

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◆退化する歓喜---ヤプーの三角(トライアングル)について 荒俣宏(1992年(平成四年)~発行 家畜人ヤプー(太田出版版)より)

退化する歓喜---ヤプーの三角(トライアングル)について

ヤプーとはいったい何者であるのか。

沼正三が、たとえば肉便器化されようとする土着ヤプーに対し、奇々怪々な賛美歌(ヒム)に托して述べることばを読むにつけ、また、みたみなどというmy team(畜群)の訛りから生じた美称の面妖なひびきを思うにつけ、ヤプーという名の由来を知りたいと欲するのが、物好きの本性というものであろう。

第一に、まずもってジョナサン・スウィフトの『ガリヴァー旅行記』である。本巻第二五章に<飛行島(ラピュータ)>が登場し、タカラマハン=タカマガハラといったふしぎな暗合が展開される点から見ても、ヤプーは古代日本神話を中間に加えて、『ガリヴァー』に出てくる奴隷人ヤプーと関係をもつことに、異論はあるまい。これを十八世紀のヤプーとしよう。

しかしそれだけではとてもすまない。問題は、沼正三のヤプーが家畜であることのみならず、その背景に人類の業(ごう)ともいうべき人種偏見の歴史をひきずっている、という点であろう。

ジョナサン・スウィフトの時代は、まだ、人種偏見は偏見でなく正論であった。白人が限りなく優位人種であり、他の人種はことごとく劣位であるという見解は、ごく索朴な正論であった。これが人種偏見として批判の激化する事態は、十八世紀以後アメリカ大陸で展開した黒人奴隷の管理にまつわる多くの非人道的処遇がヨーロッパ人みずからの筆で告発されて以後に、もちあがってくる
。その証拠に、ヴォルテールの『カンディード』やディドロの『ブーゲンヴィル航海記補遺』は、すでにスウィフトの根元的な人間嫌いから脱して、哲学よりもむしろ政治のテーマとして人種偏見をとりあげている。そして人種偏見が偏見にすぎないとする論陣の生命線は、白人以外の人種の文化言語が決して劣っていない、人としての情愛や倫理を、かれらもりっぱに具(そな)えている、という点にあった。

・・・以上 2015.10.05発行 NO:0023 家畜人ヤプー倶楽部(家畜人ヤプー全権代理人 康芳夫)より抜粋予告

◆小説 沼正三【著:嵐山光三郎】
風俗奇譚 昭和45年7月臨時増刊号より(完結編)・・・掲載底本(現在入手困難)『小説 沼正三(著:嵐山光三郎)』PDFダウンロード特典有り

いまはやりのSF小説の先駆、気宇広大のマゾヒズム文学の金字塔とうたわれる『家畜人ヤプー』の著者はナゾの作家としてヴェールに包まれている。そのナゾときに体当たりする問題作!

さて、この記事のしめくくりは、やはり、沼正三の話である。話は、『家畜人ヤプー』の作者の推理におよび、このSF作家は、いったい誰なのか。もしかすると、風下貧氏ではないか。だが、風下貧氏は即座に否定した。「沼正三なんて人物は、この世にいないんではありませんか」と。

まことに巧妙である。いったい、ブタノこと風下貧氏は、なんのために『女性本人』の記者に会ったのだろう。自分がマゾヒストであるさまざまな例証をあげる必要がどこにあったのだろう。この記事をまともにうければまったく、無償の行為ではないのか。ならば、風下貧氏は、日本のマゾヒスト協会の宣伝担当員、あるいはマゾヒスト救世主であって、世のマゾヒストたちに勇気を与えようとしたのだろうか。

そうではない。もしそうならば、フクメンをしてワザと怪奇な風体をして、自己のヒミツを興味だけでしゃべりまくるわけがないからである。

風下貧ことブタノは、ここでも、沼正三に化けるべく偽装工作をしたのである。そうでなければ、風下貧の行動には、意味がないではないか。(『女性本人』の編集部がブタノにたのみこんだのではなく、ブタノが、5千円札を投げ餌としてもちこんだのである)五千円札をおくってまで、告白記事を掲載してもらうのには、ブタノなりのふかい陰謀があったのである。

・・・以上 2015.10.05発行 NO:0023 家畜人ヤプー倶楽部(家畜人ヤプー全権代理人 康芳夫)より抜粋予告

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月蝕歌劇団創立30周年記念『家畜人ヤプー』

月蝕歌劇団創立30周年記念『家畜人ヤプー』

月蝕歌劇団創立30周年記念(連続公演 第三弾)

2015年10-11月 月蝕歌劇団 ザムザ阿佐谷

第84回本公演

家畜人ヤプー

原作◎沼正三 脚本・演出◎高取英 音楽◎ J・A・シーザー

日本人が家畜人とされるイース帝国とは何か?
皮膚強化装置・尿洗礼・畜人犬
引き裂かれた恋人
麟一郎とクララの運命は?

2000年月蝕歌劇団によって
初めて演劇化され話題を呼んだ
戦後文学・最大の奇書
三十周年記念に三たびの上演!

詳細 月蝕歌劇団公式ホームページ

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