ali world heavy-weight boxing mash 15R.1972・4・1 NIPPON BUDOKAN

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◆バックナンバー:虚業家宣言◆

虚業家宣言(13):”ホラ”をぶち上げて金を集める

◆”ホラ”をぶち上げて金を集める

別な面、つまり、資金的な面から、この試合の実現を危ぶむ声も出てきた。

収支を考えてみると、まず収入としては入場料、これは一人五千円として、客は入ってもせいぜい一万五千人だから七千五百万円。これに対し支出は、クレイのファイト・マネーが少なくとも一億五千万円はかかる。他に、滞在費やら飛行機代、会場費などを考えるといかに逆立ちしても採算がとれるはずがない。加えて、水揚げのうちからプレイガイドに一割、税金に一割。もし試合が実現したとすると、試合後に『アート・ライフ』は倒産するだろう、と細かいソロバンをはじいてくれた親切なお方までいた。

入場者一万五千といったが、日本に本当にそれだけのボクシング・ファンがいるかどうか。

昭和二十六年十一月、無敗のままタイトルを返上した前チャンピオン・ジョー・ルイスが来日したことがある。ところが当日、会場の後楽園球場に集まったのは一万人に満たなかった。

あるいは二十八年十二月、時の世界ヘビー級チャンピオン・ロッキー・マルシアノが来日したとき両国国技館のエキジビションに集まったのはわずか二千人だった。

これらの事実から見ても、日本にはそれほど多くのボクシング・ファンはいない、そう真顔で忠告してくれた人もいる。

だが、それらのすべてを私は完全に無視した。資金についても少しも心配していなかった。

まずホラをブチ上げて、それによって金を集めるというのが、”虚業家”のやり方なのだから。そして事実、私は資金に関しても、コミッショナーに関しても、着々と手を打ちつつあったのである。あるルートを通じて・・・・・・。

・・・・・・次号更新【飛行機にクレイは乗っていない!】に続く

※『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』にて【虚業家宣言】先行配信中。