『滅亡のシナリオ』:プロデュース(康芳夫)

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

滅亡のシナリオ(13)

大破滅への布石---第二次世界大戦

「聖書は言っている。千年王国の到来には、破壊と再生が必要だとね。この世界が大規模に破壊され、優れた”発展途上の神=人間”が選別された後に、神の王国はできあがる。聖書は最終的にそう語っている。それが『ヨハネの黙示録』だ。もちろん君は『ヨハネの黙示録』を読んだことがあるだろうな」

---黙示とは象徴、幻をとおして終末を予告し、神の意志を告げることである。それだけにきわめて難解な予言書の性格を持つ。そして、『ヨハネの黙示録』は、『新約聖書』で唯一の黙示録として認められている書だ。

『ヨハネの黙示録」では”第七の封印”で知られる壮絶な世界の終末と、サタンとの最終戦争(ハルマゲドン)が終わった後に、神の王国の到来する有様が描かれている。ヒトラーが絶賛し、ナチスの宗教的基盤となったアルフレッド・ローゼンベルクは、著書『二〇世紀の神話」で、キリスト教のユダヤ的部分を否定したが、その中でも『ヨハネ福音書』と、なぜか『ヨハネの黙示録」だけは賛美しているのだ。

「ええ。読んだことはあります」

中田が頷くと、博士は言った。

「地球を神の国とするためには、ヨハネの黙示録に記されたような大破壊、大破滅が襲来しなければならない。逆に言えば、それだけの災厄に襲われることで、人は神の存在を信じるわけだ。だが、人工的にそれだけの破壊を行なうハイ・テクノロジーは、ヒトラーの時代、まだ完成していなかった。そして、平和の時代が続く限り---言い換えればドイツが戦争を惹き起こさない限り、原爆や水爆、核ミサイル、生物化学兵器、遺伝子工学・・・・・・など、黙示録的大破壊に必要な発明がなされるのは、極端に遅れたことだろう」

ここで、ようやく博士の言わんとすることが中田にも理解できた。

「では、ヒトラーは、『ヨハネの黙示録』にあるような破壊手段を得るために、その前段階として第二次世界大戦を惹き起こしたというのですか?」

・・・・・・・・・次号更新【ナチ宣伝相ゲッベルスが叫んだ言葉とは】に続く