三島由紀夫に嫌われた理由:康芳夫が語る夜の紳士録 II(1)

康芳夫が語る夜の紳士録:BUBKA時代(2007.vol.04)

康芳夫が語る夜の紳士録:BUBKA時代(2007.vol.04)

---最近、康さんのお姿をいろんな媒体でお見かけすることが多くなりました。テレビでもそうだし、今度、講談社の『KING』でも連載が始まったみたいですね。

康 ほら『KING』はいまいろいろ大変だから。この企画、のるかそるかの大勝負でしょう(笑)。編集長の大決断だ。然し、この企画は必ず成功するよ。

---ハッキリおっしゃいますねえ(苦笑)。でも、やっぱり切り札としての康さんというのは、絶対あると思うんですよ。それで、今回はマスコミが抱える諸問題について、いろいろお聞きしたいなと思ってます。

康 なんでも聞いて下さい。僕の守備範囲内であればなんでも。

---で、康さんは以前出版業もやられてるじゃないですか。創魂出版時代には『松下幸之助を裁く』『池田大作を裁く』とか、衝撃的な作品ばかりを次々と出版したという。

康 そうですね。創魂出版の前に都市出版で例の『家畜人ヤプー』がある。そこからでいい?あれはいま見城君のところでやってるけど、厳密に言うとね、僕が都市出版を解散したずっと後に角川君に渡したわけよ。ところが角川君と僕はちょっといろんな問題で行き違いがあって、僕が角川君を切ったわけ。

---切っちゃいましたか、春樹さんを(笑)。

康 そう。その後彼はパクられて(笑)。で、太田出版に渡して、いま見城君の幻冬舎。ですから、最初に出版してからもう40年経ちますね。いまだに売れてます。

---凄い作品ですよね。その『ヤプー』はもともと三島由紀夫さんが紹介したものだったようですが、康さんのもとには、三島さんと一緒に市ヶ谷で割腹した森田必勝さんも出入りされていたんですよね?

康 ただね、三島は僕と森田が会うのを非常に嫌がってね。

---三島さんはなにが嫌だったんですか?

康 最初に会った時の印象が悪かったらしい(苦笑)。新宿二丁目の入口にね、『きーよ』っていう有名なジャズ喫茶があったんですよ。そこにはあらゆる人が出入りしていて、当時のヒッピーの走りみたいな連中もいてね。その連中を三島が可愛がっていた。というか、当時『世界』に連載した『月』という小説のモデルにするために接触していたんですよ。ところが、僕はその連中をいじめてたわけですね(笑)。

---いじめてた!?

康 その中の女の子の何人かに僕は手を出したりしたことがあって、その話も非常に悪い形で伝わっててね(苦笑)。まあ、そんなところから始まったんで、『血と薔薇』で「ヤプー」を載せた時も僕が噛んでるとわかると、またいい顔をしない。それで、大分前に文春を退社した僕の大学の同級生のT君というのがいて、彼の仲介で改めて和解しようということになった。それで行ったら、僕の顔を見た瞬間だよ。T君を脇に連れ出して「やっぱりダメだ、あいつとは」と言って帰っちゃった(笑)。

---帰っちゃった!一体なにをしたんですか、康さんは(笑)。

康 いや、何をしたと言うかねぇ。そこは作家としてのセンシティブな本性というか、あとでT君に聞いたら、「彼、お前のことを怖がってるぞ。非常に殺気を孕んだ顔をしてる」って言ってるわけね。「非常に無気味だ」と。なんか「北一輝みたいな感じだ」っていうんだよ。三島は北一輝が大嫌いだからね。その辺りの事は5年ぐらい前の『諸君』にT君が詳しく書いている。彼は『文藝春秋』『諸君』の編集長をつとめた男だ。

---2・26事件の影の首謀者として処刑された北一輝みたいって凄いですね。三島由紀夫を見た目で怖れさせた男だったんですね、康さんは(笑)。

・・・次号更新に続く