今週のオトコ:倉田卓次(東京高等裁判所裁判官)

倉田卓次(東京高等裁判所裁判官):週刊文春(昭和57年 10月14日号)より

倉田卓次(東京高等裁判所裁判官):週刊文春(昭和57年 10月14日号)より

戦後文学の裏面史をかざる大事件・・・・・・といっては少々オーバーだが、<『家畜人ヤプー』の覆面作家、正体を現わす>のニュースは、全国を(これもオーバーかな)駆けめぐった。戦後の一大奇書と謳われ、三島由紀夫も絶賛した幻想小説でありながら、この著者<沼正三>の実像は、作品発表以来二十六年間、杳として知られなかった。その間、他ならぬ三島由紀夫をはじめ、遠藤周作、大岡昇平、渋沢龍彦など錚々たる作家が沼正三に擬せられてきたが、”幻の作者”探しにも、ようやく終止符がうたれるわけだ。しかも、闇の中から姿を現わした「天才」(三島由紀夫の言葉)が、現役の裁判官だったとは・・・・・・。