2章 ヒトラー総統は三人だった!ーーーベルリン陥落後、ヒトラー復活の操作が行なわれていた:総統官邸の庭で焼かれたヒトラーの遺体とは?

滅亡のシナリオ:2章 ヒトラー総統は三人だった!ーーーベルリン陥落後、ヒトラー復活の操作が行なわれていた滅亡のシナリオ:総統官邸の庭で焼かれたヒトラーの遺体とは?

プロデュース(康芳夫)/ノストラダムス(原作)/ヒトラー(演出)/川尻徹(著)精神科医 川尻徹

博士は、まるで幼児にものを教えるような態度で、中田に語りかけた。

「通常の歴史では、確かに、ヒトラーは一九四五年四月三◯日に、総統官邸の地下壕で銃殺自殺した---ということになっている。ではその経緯を、ちょっと調べてみよう」

ヒトラーが自殺した時の様子については戦記作家ジョン・トーランドが、著書『アドルフ・ヒトラー』で詳細に伝えている。博士は中田に、その部分にザッと目を通させた。

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「ヒトラー夫妻(ヒトラーは長年の愛人だったエバ・ブラウンと、自殺する二日前に結婚式を挙げていた)は居室の長椅子に並んで腰を下ろした。・・・・・・先に死んだのはエバのほうだった。---服毒自殺だった。午後三時三◯分ごろ・ヒトラーは七・六五口径のワルサー・ピストルを採り上げた。・・・・・・彼は銃口を右のこめかみに押し当てて引金を引いた。・・・・・・会議室にいたゲッペルス(宣伝相、最終段階では首相に任命された)、ボルマン(ナチ党官房長、ヒトラーの秘書役)、アクスマン(ヒトラー・ユーゲントの指導者)、ギュンシェ(副官)は、銃声を聞いて一瞬ためらったあと、ゲッベルスを先頭にしてヒトラーの控室に駆けこんだ、長椅子にすわったヒトラーが低いテーブルにうつぶせになっているのを見た。その左側で、エバが肘掛けの上に倒れていた。死の苦悶のなかで唇がしっかり閉じられ、鼻孔が青酸カリのために変色していた・・・・・・リンゲとシュトゥンプフェッガー博士が、ヒトラーの遺体を焦茶色の軍用毛布に包んで総統官邸の庭に運びだした。・・・・・・ケンプカ(運転手)とギュンシェは、エバの遺体をヒトラーの右側に横たえた。・・・・・・ゲッベルスがケンプカにマッチ箱を渡した。彼は布きれに火をつけて遺体の上に投げた。茸形の煮えたぎる火の玉が立ちのぼり、もうもうたる黒煙が吹きあげた。炎上する首都にあってそれは小さな炎にすぎなかったが、恐ろしい眺めであった。・・・・・・新たなガソリン容器が運ばれ、それから三時間、くすぶる遺体にガソリンが注ぎ続けられた。・・・・・・その夜、ヒトラーとエバの黒焦げの遺体はキャンヴァスに包まれ、ギュンシェによれば、『地下壕出口の外の砲弾穴に投げこまれ、上から土をかぶせて、表面を木の棒で突き固められた』・・・・・・」(同書・下巻、五◯二~五◯四ページ)

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さらにエピローグで、トーランドはこうも書いている。

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「遺体の歯列写真が資料として保管されおり、一九七二年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の歯科法医学の専門家ライダー・ソグニーズ博士が、これらの歯は一九四三年に撮影されたヒトラーの頭部エックス線写真の歯列と完全に一致することを発見した」(同書、五◯七ページ)

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中田はそのページを指で示した。

「確かに戦後、ヒトラーの生存説がいろいろ流布されてましたが、このとおり、ヒトラーの死は確認されているではないですか」

「まあ、ちょっと待て」

川尻博士は、穏やかに制止した。

「その前に、どうして私が、ヒトラーが生きていることを確信したか、いや、そもそもヒトラーのとてつもない計画に気がついたか、その発端を説明しよう」

また一冊の本がデスクの上に置かれた。編集者の中田にも馴染みの本だった。『週刊プレイボーイ』に連載され、単行本として集英社から刊行された、落合信彦氏の『20世紀最後の真実』である。これは、いまもなお活動しているナチスの残党を追求し、南米の奥地まで飛びこんで取材したドキュメンタリーだ。

「私は、三年まえ、この本を読んでいて、偶然にも、とんでもないものを発見したのだ。・・・・・・ほら、この写真だ」

・・・・・・・・・次号更新【二葉の写真---エバ・ブラウンは生きていた!】に続く