ロッキー・青木

虚業家宣言:康芳夫

私は事前調査の意味もあって、すぐに、その看板に出ていた西五十六丁目の『ベニハナ』に飛び込んだ。日本の城を模した造りが、いかにもエキゾチズム好みのアメリカ人に受けそうだ。

一店舗につき、最低でも二十万ドルの純益があるというだけあって、店は活気を呈している。鉄板焼きのステーキ・テーブルは満員、そして、おどろいたことにウェイティング・ルームですら満員なのだ。コックたちは赤や青、色どりあざやかな帽子をかぶり、客の見ている前でスパッ、スパッとぶ厚い牛肉の塊をカットしている。それを見つめている客たちの熱心なこと。

Benihana introduce the Japanese steak ceremony.

と、ロッキーが考え出したキャッチフレーズそのままの光景ではないか。

日本人が見ればハッタリと思うかもしれないが、これでいいのである。私はこの世の中ハッタリが必要だと思う。遊びで商売してるんじゃない。もし、ハッタリでプラスになるなら、大いに吹き、大いにハッタリを言えばいい。

店の様子を偵察した私は、いよいよ、

「これならロッキーで大丈夫だ」

という確信を深めたのである。

ホテルに戻ると、私はすぐ、ニュージャージーのロッキーの家に電話をした。忙しく全世界を飛び回っている彼のことだから、在宅しているとは限らない。予想どおリロッキーは出かけていた。現在はシカゴにいるという秘書の話である。

私は、すぐにシカゴの『ベニハナ』に電話を入れようとして、待てよと考えなおした。シカゴまで長距離電話をかけて、長々と交渉していたら、電話料を何十ドル取られるかわかったもんじゃない。よし、ここは、ロッキーの方から、電話させるに限る。慌てて、もう一度、ロッキーの秘書に電話を入れ、至急電話連絡を乞うと伝えさせた。

「貴殿のビジネスにとって非常に重大なことだ」

と、つけ加えるのを私は忘れなかった。

ミミッチい話だとバカにする方がいるかもしれないが、私は、それほど金に困っていたのである。

・・・・・・次号更新【ホラ吹き同士の対決】に続く

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『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』真の虚業家の使命は何よりも時代に風穴を開け、閉塞的状況を束の間でもひっくり返して見せることである。「国際暗黒プロデューサー」、「神をも呼ぶ男」、「虚業家」といった呼び名すら弄ぶ”怪人”『康芳夫』発行メールマガジン。・・・配信内容:『康芳夫の仕掛けごと(裏と表),他の追従を許さない社会時評、人生相談、人生論などを展開,そして・・・』・・・小生 ほえまくっているが狂犬ではないので御心配なく 。

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