真贋に挑む男 康芳夫(2):STUDIO VOICE JULY 1987 VOL.139 より

真贋に挑む男 康芳夫:STUDIO VOICE JULY 1987 VOL.139

康氏の実力で、夢の『真贋展』は一流新聞社の協力を得て、権威たりうる美術館にて、来年5月には実現する(と、断言)。「お客は呼べます。また世界的問題になるんじゃないですか」。

「ノアの箱舟」のプロジェクトは今年8月に35人の国際調査隊編成でイラクのニシル山を発掘する予定。費用5億円。今まで聖書をもとにアララト山(トルコ、ソ連国境)が箱舟漂着地とされていたが、康氏は「ギルガメッシュ叙事詩」をもとに新説をたてた。

「マスコミはね、どうせ康さんのことだから、何か自分で埋めておいて”発見”するんだろう、なんて茶化し半分に言うんだけどさ。もちろんそんなことするつもりはないし、絶対にあるとは思ってる。舟の破片が。ただ、それを、いわゆる権威の側、例えば大英博物館が「これは違う」という判断を下しますよね。でも、それは僕の心の中では”本物”なんだよ。いずれにしても虚実被膜の間だよね。どっちかわかんない。ミステリーとして残る。

ネッシーの時もね。ネス湖って北海につながっているから実はトドだったことはある。でも一時的に巨大なロマンティシズムを満足させたと思う。

「真贋展」も壮大なロマンティズムがかかっているわけですよ。反体制的な野望、それは種公の言うように”暗い情熱”であるかもしれないけれど。

「真贋」というのは美術だけの問題ではないしね。真は社会的権威が認めたものかもしれないけれど贋の方が価値がある時もある。フランスでニセ・ワインが出まわったときも、スペインの安物だったけど、おいしいんですよね。

名画をX線で調べて贋作を探す、なんてバカげてると思う。直感を確認するなら別だけと。科学的鑑定なんて”どうでもいいじゃない”と思う。目で観ていいものはいいんですよ。昨日、描かれたものだって昔のより良ければいいじゃない。本物かどうかは自分が決めることであってね」。

・・・了