ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三・・・『血と薔薇』1969年 No.4より(6)
第二章 円盤艇の内部
一 美女と侏儒
---仰向けに倒れていた。それまで羽織っていたと思われる、不思議な、紫色に光る毛皮のケープが脱げ落ちて、ただ、乳房から腿の付根までを包むだけの、海水着のようなワンピースしか身に付けてはいなかった。しかも玉貝のようにすきとおった生地のため、それをとおして血色よい薄桃色の肌が見えるのであった。隆起した胸、しまった腰、豊満な臀、そしてそれらを連ねる成熟した女体の曲線が妖しいまでに麟一郎を挑発するのであった。床上に流れる房々とした金髪、閉じたままの双眼にポイントを添える細く濃い眉、白い歯ののぞく口元の、薄い唇の淫蕩、格好のよい鼻と耳---そして神秘的なエキゾチシズムを漂わせた風情をうかがうとき、彼女は北欧系金髪女の高級の標本にまちがいないのであった。
一見外傷はなく、呼吸も止っていない。ただ、墜落のときの衝撃で気を失っているにすぎないことが見てとれた。麟一郎は女の頭のわきに両膝ついてすわり、上半身を抱き起した。
「あっ」
「まあ」
麟一郎とクララの二人は、思わず叫んだ。その異様なもの---今までケープの下に隠れて見えなかったものが急に現われたからである。
・・・ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三:『血と薔薇』1969年 No.4より
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