週刊ポスト(1993年3月26日)より
カラスと一緒に銀座を闊歩する「怪人」
宇宙人か、地底人か
志茂田景樹
銀座の酒場であう康さんからは、不思議なエネルギーが立ちのぼっている。
突然、地の底から湧いてきたような、天から降ってきて、勝手におさまってしまったような違和感がある。
強烈な違和感である。
ところが、不可解なことに、五十年も百年も前から、ごく自然にそこにいたような、いや一万年も二万年も前からおなじところに存在していたような日常感をただよわせてもいる。
いったい、これは、どうしたことなのか。
じつに、ユニークな風貌をしている。
超人的な違和感の源泉のひとつになっている。
宇宙人と言ってもいいし、地底人のような気もする。
だが、まわりの雰囲気に、まったく無理なく溶けこんでいる日常感は、どこにその源泉があるのだろう。
おそらくそれは、康さんという人間を測る尺度がないため、まわりの人がかえって素直に受け入れてしまうからにちがいない。
康さんの経歴のだいたいのところは、ぼくも知っている。でも、康さんに経歴は、関係ない。いつもなにをやっているかわからないでいて、なにかしでかしそうな期待感とおそれをあたえてくれるのである。
康さんの意識のなかで、なにかが凝集してひとつの像になったとき、それは外界に形となって現れる。周囲がおどろくのは、そのときである。