『家畜人ヤプー』の発見

【家畜人ヤプー 沼正三 一九七◯年】定本:都市出版社

【家畜人ヤプー 沼正三 一九七◯年】定本:都市出版社

地球紀元三九七〇年の地球、そこは白人貴族を頂点にいただく白人帝国だった。黒人は奴隷、そして黄色人種である日本人は、知性の高いことを認められながら『ヤプー』の名で呼ばれる”知性猿猴(シミアス・サピエンス)”、つまり猿の一種と考えられていた。ヤプーは常に裸で、その皮膚はどんな寒さにも耐えられるよう熱処理がほどこされている。そしてヤプーは奴隷以下の”生きた道具”としてしか扱われない。

たとえば、<肉足台兼用の舌人形(クニリンガ)>、これは女性用の生きた自慰器具である。その用に立てるとき以外は足を乗せる台としても使われている。

ヤプーを舌人形にするためには、その体に種々の加工が加えられる。背が高いと具合が悪いので生体縮小機で身長を二分の一にし、全身の毛を薬液で除去、歯は抜き、アゴの骨も削ってしまう。舌だけは造肉刺激剤によって異常発達させ、女性がその部分をナメられたときに感触の良いよう、海綿体を移植、さらに、そのときに与えられる愛液を口からこぼさないために、唇の外側には吸盤質が、内側にはスポンジ質が付加される。

「旅行用だから小型にして、でも、性能は並以上に。できる?」

「畏まりました。舌長を前のと同じにしておきます。確か若奥様のは・・・・
・・全長二十五センチ、唇外長十九センチにすればよろしいので」

「今使ってるのはアゴが張り過ぎてるから、今度のはもう少し削って。腰かけて使うことが多いから、あまり開股角度の大きいのは困るわ。それと、わたしはおつゆが多い方だから・・・・・・」

白人の便所の代わりをする、つまり尻の穴や尿道口に直接口をつけて、尿や便を食べる”器具”が<肉便器(セツチン)>。彼は生まれるとすぐ、大飼育所(ヤプーナリー)で肉体改造の手術を受ける。将来、大量の排泄物を食べられるように右肺が摘出され、胃が拡大される。そして三歳になると、黒人の調教師のもとで白神像の礼拝を習慣づけられる。といっても、礼拝の対象は白神像全体ではなく全裸の下半身の一部、尻の穴と尿道口だけ。彼らは礼拝のたびに漂ってくる独特の臭気をしだいに芳香と感ずるようになる。

そして六歳になると、いよいよ普通教育が始まるのである。黒人の教師は、おごそかにこう言う。

「アシッコ(ASHICKO)とおっしゃたら、これは賜飲号令(ドリンク・ビディング)。飲物(ドリンク)をお恵み下さるから、立位で神様の股の飲物孔の方へ首を伸ばすのだ。女神様によっていろんな癖があるぞ。こっちの顔が入ったとたん、すぐご下賜なさる方、いったんこっちの顔を絞めつけてからなさる方、お年を召した方のときは、まずこちらの舌で刺激を加えてさしあげることもあるから注意せいよ。

賜食号令(イート・ビディング)はアンコ(UNGK)だ。このときは食物(フード)を下さる。座位で仰向いて、お尻の食物孔(フード・ホール)が開けた口の真上に来るようにする。いいな、尻に顔を合わせるのであって、神様のほうで顔に尻を合わせて下さると思ったら大間違いだぞ」

他にも、ヘドを受けとめる<肉吐盆(ボオミトラー)>、クツを磨く<磨靴奴(ブラッシ)>、男性用の<唇人形(ペニリンガ)>、生理用パットになる<生理極小畜(メンス・ミユゼツト・・・・・・。

・・・・・・次号更新【三島由紀夫が発見した『ヤプー』】に続く

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