ロス五輪「30年目の真実」上

モハメド・アリの顧問弁護士を介してテレビ放映権を独占交渉

虚業家一代 康芳夫(1):ロス五輪「30年目の真実」上(日刊ゲンダイ、2014年(平成26年)2月11日より)

テレビはソチ五輪中継で盛り上がっているが、そのウラで広告代理店やテレビ局は6年後の東京五輪に向けて着々と動き出している。しかし、国際オリンピック委員会(IOC)の商業主義のもと、五輪の放映権料はうなぎ上り。08年の北京大会は198億円。12年のロンドン大会は325億円(10年バンクーバー冬季大会合む)。14年ソチ、16年リオの放映権料は2大会合わせて360億円と天井知らずだ。そんなカネまみれの商業五輪の草分けといわれるのが84年ロス大会。日本のテレビ局がIOCに支払った放映権料は当時で46億円だった。康氏はある民放テレビ局幹部から依頼を受け、放映権の独占契約を結ぶために舞台裏で暗躍していた。

「もう時効だろうけど、当時、テレビ朝日の専務だった三浦甲子二から依頼を受けてね。彼はもともと朝日新聞の記者で政治家の河野一郎に深く食い込んでいた人物です。でも、42歳の時に朝日のお家騒動で失脚してテレ朝にやって来た。三浦とは俺がモハメド・アリを日本に招聘した時(72年)以来の仲でね。実はなぜ、俺がその任についたかといえば、ロス五輪の大会組織委員長のピーター・ユベロスの顧問弁護士が俺の顧問弁護士で。ロバート・アラムという弁護士なんだけど、彼はモハメド・アリの徴兵拒否をめぐる裁判を勝利させたことで一躍世界的になり、アリの顧問弁護士になっていた。かつケネディ家のロイヤー。新しいケネディ駐日大使も彼女が子供の頃から可愛がっていた。まぁ、ケネディ家のロイヤーって40人くらいいるんだけどね(笑い)。それでアラムを通じてユベロスを紹介してもらった。そしたら一発で話がついた」

ここで契約が成立していたら、ロス五輪はテレビ朝日が80年のモスクワ五輪に続いて独占放送契約を結ぶことになっていた。ところが、そううまくコトは運ばなかった・・・・・・

(つづく)