康芳夫

佐伯啓思(敬称略)、朝日掲載の「異論のススメ 正論のススメ」が話題になることが可笑しな話だ

佐伯啓思が朝日に定期的にコラムをかくということがなんでそんなに話題にすべきことなのか。その事が正に現在の論壇メディア状況の歪みを物語っているのではないか。

別に彼の論調がそれほどユニークだとは考えられない。

云ってみれがごくあたり前の事を云っているだけだ。

それが話題になるということは朝日の論調が何処か「ヒズミ」があったということか。

一説によると、朝日は例の慰安婦問題以降、彼をいわゆる右派の攻撃を避ける為の「タマヨケ」として、利用しているということだが、これもよく分からない説だ。

今から約五十年前の朝日に当時左派でガッチリ固めたれていたと見られがちな朝日論壇文芸時評に、当時「大東亜戦争」肯定論を書いて、大問題になった、林房雄を起用して大センセーションを巻き起こしたことが記憶にある。起用したのは他ならぬ当時、名(迷)学芸部長だった扇谷正造。

ただここで云えることは、林房雄の「大東亜戦争」肯定論が当時発刊された凡百の「大東亜戦争」肯定論と大きく違う箇所は、アジアに対する侵略戦争責任を厳しく糾弾しているところだ。

いずれにしても転向作家、林房雄が当時勢いを増しつつあった、いわゆる右派ナショナリストのリーダーであったことは間違いない。

それに比べれば、左派、リベラリストの一部からどっちかと云えば煙たがられている、いわゆる自称常識家の佐伯啓思の起用なぞ、目クジラたてるほどの話ではないのではないか。