康芳夫

福岡伸一大兄に告ぐ

前略、大分前貴兄とはエコロジー雑誌「ソトコト」の小黒編集長の紹介でお会いした覚えがある。以来実に久しぶりですな。

ところで貴兄その後、生物学者、社会評論家としてそれなりに売れてい様だが一体全体貴兄の最終的に云いたいホンネは何処にあるのかさっぱり判然としない。率直に我々無知蒙昧な大衆に分かりやすく教示して下さい。

今一番問題なには人類とウイルスの共存という極めて差し迫った問題。一体全体共存とは何を意味するのか人類は一日に数千億個(匹)以上のウイルスを殺戮して辛うじて生き延びているのではないか。

全面的に殺戮しきれないから共存しようとは余りにも好き勝手なムシが良すぎる発想だよ。それこそ神を超えた存在として「永遠の宇宙の摂理」があざ笑っているぞ。

宇宙の摂理からすれば人類もウイルスもまったく平等の存在なのだ。したがってどちらか苛酷極まる生存競争に勝った方が生き残るということだ。

それが貴兄の説くところのピユシスの意味するところではないのか。兎に角我々人類は人類同士の戦いは一時休戦してウイルスとの全面戦争に打ち勝つしかないが、おそらく最終的にそれは不可能だろう。

貴兄の結論でどうしても納得出来ないのはいわゆる貴兄が説く動的平衡が最終的に何を意味するかということだ。先述のとおり我々人類はウイルスと人類が生き続ける限り続くウイルスとの全面戦争に勝ち抜くしか生き延びる手段は無いはずではないか。

それが不可能だからいわゆる動的平衡を目指すということなのか。それは余りにムシが良すぎる話だ。要するに動的平衡とは余りにもかっこ良すぎる表現術でしかない。

先述のとおり我々人類はウイルスとの全面戦争を永遠に繰り広げるしかないのだ。それこそ神を超えた宇宙の摂理。即ちピユシスが人類に課したテーマではないのか。

小生は十数年前から人類は最終的にウイルスとの全面戦争に敗れ去るかも知れないと云い続けてきた。それこそ貴兄が説くところのピユシス=宇宙の永遠の摂理に他ならない。

永遠なる人類同士の醜い争いもこのピユシスの命ずるところに他ならない。然しピユシスは暗示しているではないか。

あと何百年、何千年人類が生存し続けたいなら、人類同士の相討ちは程々にしてウイルスと全面戦争するしかなっことを。

それが出来ないなら誠にムシのいい話しだが残余の部分に関しては共存を図るしかないということなのだ。

それが貴兄が説く動的平衡ということだよ。

貴兄に最後に一言忠告しておく。

いわゆる動的平衡を唱えて一躍、生物学者、文明評論家として認知されて久しいかも知れないが貴兄の説く動的平衡にこだわり続けると貴兄必ず行き詰まるよ。

我々人類が生き延びる為に単にウイルスに留まらず他の生物に対し如何に残酷極まる対応を繰り返して来たかを一番熟知しているのは生物学者である貴方に他ならないからだ。

草々 康芳夫