オリバー君

「僕らは康さんに立ち向かうドン・キホーテだ」PeOPLe テリー伊藤・・・週刊ポスト(1998・5・1)

何故、こんな怪しい人間をいまだ日本国家は野放しにしているのか。何故、国外追放にしないのか。日本は法治国家ではなかったのか。

ここでは詳しいことは書けないけれど、最強のデンジャラス男なんだ、康芳夫という人は。

あの怪しさは本当に変わらない。僕がテレビ局にいた時代だから、もう20年も前のことだけど、そのころ康さんはすでに風貌から何から大プロデューサー。ドン・キングみたいな感じだった。なんていうか、東洋の大魔術師のような臭いを当時から漂わせていた。

僕が康さんから学んだのは「テレビというものは見世物小屋の延長である」ということ。猪木とアリの対決しかり、オリバー君しかり、ネッシーに、UFOしかり。その後のこういう企画は全部康さんが原点。それこそ学生のころから、彼がやってきたいろんなイベントに興奮してた。

テレビというのは近代文化が作り出したものだけど、近代文化だけでは成り立たない。人間というのは暗黒の部分を持っている、それを康さんの仕事に教えられた。今のテレビは、やれコギャルだ、援助交際だ、幸せな田園都市線のラブストーリーだって、等身大の刺激に毒されてしまっているけど、僕の耳には、康さんの悪魔の囁きが、ずっと聞こえ続けている。

いつも康さんみたいになりたいと思っていたけれど、まだまだ足もとにも及びつかない。多分、一生追いつかないと思う。

最近は康さんのでかいイベントが見られないけど、それが日本のつまらないところじゃないかな。こういう人が住みにくい世の中なんだ。僕らはこうして面白がれるけど、スポンサーの方が四苦八苦して、現実的な明日の米びつにこまっているような世の中ではこういう大ロマンを語る人を認められる土壌が出来てない。

僕らテレビを作る人間は、みんな康さんに立ち向かうドン・キホーテのようなもの。康さんは回る風車なんだ。だから、ずっと毒を発しててほしい。まだまだ風車は加速し、まわり続けているはず。我々の見果てぬスーパースターなんですよ。(談)