真贋に挑む男 康芳夫(1):STUDIO VOICE JULY 1987 VOL.139 より

真贋に挑む男 康芳夫:STUDIO VOICE JULY 1987 VOL.139

かつてネス湖にネッシーを求め、現在はノアの箱舟を探す”風雲児プロモーター”康芳夫氏は、さらにもうひとつ、お騒がせ企画をすすめている。西洋美術の名作と、その贋作50点余の

『真贋展』。

「昔から暖めていた企画。ただ、非常にむずかしい問題を含んでますよ。僕はニセモノという言葉は嫌いだけど、美術界の言葉でいえばニセモノの絵を集めてくるわけですよ。今回は種公(種村季弘)の『贋作者列伝』に登場するものを中心にした、歴史的に認められたニセモノが中心ですけとね。真贋問題自体が美術界のハレモノ、ブラック・ホールですからね。ブリジストン美術館でも今、レンブラントが1枚はずされてる。館長が自ら買った絵なんですけどね。「贋作者列伝」でも書かれてる(贋作者ハン・ファン・メーヘレンの作品を本物と見たてた)鑑定士ブレディウスの鑑定書付なんです。竹橋あたりだって厳密にチェックしたら何割かはニセモノだという可能性はある。そうでしょ?真贋展なんていったら、ジャーナリズムは好奇心強いか、もう一度全部、調べろってことになりかねない。そうなれば、美術評論家、鑑定家、コレクター、画商、美術館、主催新聞社なんかの権威が根本から揺るがされる事件になる。いったい本物ってなんだろうという---。そう、トゥルー・クリティシズムになるでしょうね。

今までも考えついた人は他にもいかもしれませんよ。でも、自分で言うのも何だけど、相当のプッシング・パワーがないと、出来ませんよ。もともとしがらみのない一匹狼だしね」。

・・・次号更新に続く