言論王 島田雅彦:康芳夫 対談(2)
この世界、今は全部システム化されてるわけですよ。話をつけて大手代理店に持っていけば、あとは自動的に金が動く。マドンナやタイソンを呼んだって問題にはならないわけ。システムを呼んだにすぎないわけだから(康)
編集部 現在、手掛けているのは、「ノアの箱舟」の発掘調査ですね。
康 うん。話はちょっとズレるんですけど、実はこの商売にあまり興味を覚えなくなってね。シフトを移動したいと考えていたんです。今は全部システム化されているわけですよ。この世界は、大手広告代理店があってね、そこに話だけ持っていけば、あとは全部自動的にお金も動いちゃうわけ。だからマドンナ呼んだって、タイソン呼んだって、誰を呼んでも問題ではないわけ。システムを呼んだわけだから。
島 なるほどね。
康 当時はね、お金集めるのは大変なことなんです。向こうだって金が無ければ動かないんだから。じゃあ、どっから金を持ってくるのかと言ったら、これは絶対口がさけても言えない所から持ってくるわけ(笑)。まさに地下経済から汲み上げる・・・それが一番大事なんです。向こうとのコネ造りももちろん大変なんだけど、金ね、ブラックホールにある金を手探りで入っていってつかんでくる。この金とコネっていう基盤造りで仕事の大半は費やされちゃう(笑)
纒集部 その地下経済について少し教えてくれませんか?
康 今のアングラマネーの元になっているのは、本当のあぶく銭ですよね。当時はお金が全く無い。銀行にも無い。じゃあ何を持ってくるかと言うと、例えば脱税とかね、そういうお金です。今はもう時効だけど、当時は税務当局がさかんに聞いてくる。だから、税務署との対決までが大きな仕事になってくる。
島 うーん。なるほどね(笑)
康 猪木とアリの試合はまともな金でしたけどね、その前にボクシングの興業でね、やっぱり広告代理店は金出さないんだ。当時は土地成金がたくさんいて、そういう所からかき集めるっていう作業がまた大変でね。
島 うーん。じゃあ、今はこういういっさいのシステムの中では退屈でしょう。
康 そう!退屈しちゃってね、今やプロモーターの技術というのは、まったくの整然たるシステムの中だね!誰が何を呼ぶなんて関係ないの。当時は神(じん)なのか康なのかって話になったんです。そういう個人の力がファクターとして大きかった。だから面白かったしダイナミズムもあった。
・・・次号更新に続く