「猪木対アリ戦」で大儲け!

奇抜な発想で世界をアッといわせた非凡な”虚業家”:安部譲二(特冊新鮮組元祖 No.274 平成13年3/15 より)

奇抜な発想で世界をアッといわせた非凡な”虚業家”:安部譲二(特冊新鮮組元祖 No.274 平成13年3/15 より)

僕とおない歳の康芳夫は、毛皮のコートを着込んで、烏の入った烏籠を片手に提げて、悠々と銀座を歩いています。

康芳夫ほど変った興行師を僕は、他に一人も知りません。

広い額の巨きな顔は、微笑むとそれはチャーミングですが、迫力のある異相でした。

康芳夫に愛人の女優を盗まれた小説家は、

「あいつは普通の人間の男ではなくて、魔法使いか、イギリスの森に住んでいるホワイトオウルの化物だ」

と、ヤケ酒に酔って喚きました。

ホワイトオウルというのは、身体と顔の巨きな白ふくろうです。

康芳夫に四億円も、昭和五十一年に捲きあげられた日本テレビの社長は、

「ライオンだ。あの男は見ての通りの人喰いライオンだ」

二度と顔も見たくない・・・・・・と、半狂乱で叫びました。

康芳夫は、何を言われても屁の河童です。

男でも女でも、若くても歳を取っていても、康芳夫と会って五分も喋ると、皆なぜかその気になってしまうのが不思議でした。

スコットランドのネス湖に棲むという恐竜ネッシーを、捕まえてしまおうという、石原慎太郎先生を隊長とする大探検隊。

偵察衛星がアラビアの山頂にあるのを撮影した、ノアの方舟探検隊なんていう壮大な計画を、康芳夫が立案すると、必ず資金を出すスポンサーが何人でも、喜んで現れるのです。

・・・次号更新に続く