「猪木対アリ戦」で大儲け!
僕とおない歳の康芳夫は、毛皮のコートを着込んで、烏の入った烏籠を片手に提げて、悠々と銀座を歩いています。
康芳夫ほど変った興行師を僕は、他に一人も知りません。
広い額の巨きな顔は、微笑むとそれはチャーミングですが、迫力のある異相でした。
康芳夫に愛人の女優を盗まれた小説家は、
「あいつは普通の人間の男ではなくて、魔法使いか、イギリスの森に住んでいるホワイトオウルの化物だ」
と、ヤケ酒に酔って喚きました。
ホワイトオウルというのは、身体と顔の巨きな白ふくろうです。
康芳夫に四億円も、昭和五十一年に捲きあげられた日本テレビの社長は、
「ライオンだ。あの男は見ての通りの人喰いライオンだ」
二度と顔も見たくない・・・・・・と、半狂乱で叫びました。
康芳夫は、何を言われても屁の河童です。
男でも女でも、若くても歳を取っていても、康芳夫と会って五分も喋ると、皆なぜかその気になってしまうのが不思議でした。
スコットランドのネス湖に棲むという恐竜ネッシーを、捕まえてしまおうという、石原慎太郎先生を隊長とする大探検隊。
偵察衛星がアラビアの山頂にあるのを撮影した、ノアの方舟探検隊なんていう壮大な計画を、康芳夫が立案すると、必ず資金を出すスポンサーが何人でも、喜んで現れるのです。
・・・次号更新に続く