銀座、赤坂でのこ乱行(2)
夜が、また派手だった。
到着した日の深夜、クレイが、「ジャパニーズ・ガールと寝たい」と言い出した。まさか、いくらなんでも、今夜はクレイも疲れているからと思って、私は女の用意をしていなかった。いくつか心当たりのクラブに当ってみたが、ソレ用の女の子はすでに”売れて”しまってという返事ばかり。最後に、旧知の中野新橋の女将に頼んで、やっとその妓をクレイの部屋に連れ込んだとたん、その妓が泣き出してしまったのだ。「あたしは、まだ、黒人としたことない。あんな大きのイヤだ」というのだ。それをなだめすかして・・・・・・。こっちの方が泣きたいくらいだった。
また、銀座の『花』、赤坂の『ラテン・クォーター』、『ビブロス』、『コルドンブルー』とロッキーは毎晩のようにクレイを引き回すのだ。ブラック・モスレムの牧師であるクレイは酒も煙草も一切やらない。飲むのはジンジャーエール一杯だけ。
それで女を口説いている。アノ方はモスレムでも禁じていないと見える。一日ごとに相手を変えて、やりまくっていた。赤坂や銀座には有名人なら誰とでも寝るという女、金のためなら誰とでも寝るという女がワンサといるのだ。クレイは何もしなくても、女が寄ってくるのだった。
クレイのご乱行が頂点に達したのが試合前夜である。
その夜もクレイはロッキーと連れ立って出かけた。
「今夜は九時までには必ず戻る」
マネージャーのハーバートにもそう言って出たのだが、九時が十時になってもクレイは帰って来ない。いつも行っている『花』、『ビブロス』などに片っ端から電話を入れるが、
「今晩はお見えになっていません」
どこに行ったのかさっぱりわからない。さすがのハーバートも怒り出してしまった。
やっと二人が帰って来たときには十一時をとっくに回っていた。
カッとしたクレイの用心棒が、酔眼モーローとしたロッキーを張り飛ばす。ロッキーもかつてアマレスの全米チャンピオンを取ったほどの男だ。すぐに態勢を整え直すと、その用心棒に飛びかかっていった。深夜のホテル・オークラで、時ならぬ大立ち回り。下の階に泊まっていた連中は胆をツブシたことだろう。
クレイはフンゼンとした表情で二人のとっ組み合いを眺めていた。
もし、あのとき、クレイが酔っていて、パンチを振るうようなことになっていたら、確実にケガ人が出、翌日の試合は中止になっていただろう。クレイが酒を飲んでいなかったのがせめてもの救いだった。
それにしても、最後の最後までまったく人騒がせな男だ。
・・・・・・次号更新【脳神経科に入院したフォスター】に続く
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『虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)』真の虚業家の使命は何よりも時代に風穴を開け、閉塞的状況を束の間でもひっくり返して見せることである。「国際暗黒プロデューサー」、「神をも呼ぶ男」、「虚業家」といった呼び名すら弄ぶ”怪人”『康芳夫』発行メールマガジン。・・・配信内容:『康芳夫の仕掛けごと(裏と表),他の追従を許さない社会時評、人生相談、人生論などを展開,そして・・・』・・・小生 ほえまくっているが狂犬ではないので御心配なく 。
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