ロス五輪に割り込んだ”騒動師”康氏:スポーツニッポン(昭和57年8月4日)
交渉が凍結状態になっている二年後のロサンゼルスオリンピックの放送問題で、モスクワに続き一民放局が独占しそうと一部で報道され、関係者はびっくりしている。その”仕掛人”康芳夫氏(インターナショナル・スポーティング・アソシエイツ社代表)は「あるテレビ局の法的委任状を持っている」と発言、一方テレビ局側は「あり得ない話」と否定しているが、康氏といえば大物の呼び屋として、過去何度も話題を集めた人、ちょっとした”冷夏のミステリー”ふうな雲行きだ。
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---興行の世界ではライバルともいえる電通と康さんの関係は?
康 つかず離れず、今でもお互い利益があれば仕事するって関係ですね。昨日の仲間は今日の敵ってことです。でも興行も重要なビジネスである電通にとっては、個人に利権をかき回されるのは非常に好ましからざることだろうね。
---巨大な代理店に拮抗する力を個人で持つというのは、どういう感覚なんでしょう?
康 言えないことはいっぱいあるけど、巨大な企業を出し抜くっていうことは大変ですよ。五輪の件では、僕の弁護士と組織委員長がたまたまつながっていたから先手を打てたけど、相手は電通ですからね。でも僕は、出し抜いて生きていくしかない。僕が興行の仕事から表向き手を引いた大きな理由は、電通が音楽でもスポーツでも押さえ込んじゃったから。この世界にロマンがなくなったというか、ひとりの度胸で大きな興行をやれる世界じゃなくなったね。モハメド・アリを呼んだ頃はまだ個人の力でできたけど、その後から急激に興行が組織化されていった。大きなお金も動いてるし、システム化されているほうが向こうも安全だしね。
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電通の深層:大下英治(著)
大下英治君の要請により小生のインタビューも掲載している