ニッポン最後の怪人・康芳夫

小生としては福田和也君は政治的ファシストだとは決して考えないが、彼の「哲学」としてのファシズムに関する深い考察はきわめてユニークなものがある

今から二十数年前、当時 磯崎新、浅田彰、柄谷行人を編集同人とする現代思想誌「批評空間」において、小生の企画により「ハイデッガーとナチズム」という二十世紀思想哲学界における最大の難問の特集が実現したのはひとえに福田和也君の協力があってのことであった。

繰り返しになるがこのテーマはハイデッガーの一番弟子であったかのサルトルが沈黙して一切ふれなかったことからもよく分かるとおり二十世紀哲学思想界最大の難問である。

この企画は福田和也君起用に関して当時故内藤裕治編集長等の反対があり、やむを得ず中沢新一君に依頼することになった訳だが予期したとおり彼からドタキャンをくらってしまった。

当時彼はオウム真理教事件に深くまきこまれ、いろいろ悩んでいたこともあったが、彼がドタキャンした根本的理由は「ハイデッガーとナチズム」問題の本質が彼にとって重すぎたという以外にドタキャン理由が考えられない。

福田和也君はあくまでも彼らしく果敢にもテーマに挑んでくれたが結果的には、いわゆる原稿のオトシ等が続き、必ずしも内容的には小生の期待したコンテンツにはならなかったが、その後「批評空間」も出版社の事情等により休刊となってしまい、続編を月刊「新潮」に発表したいきさつがある。

この件に関しては、機会を作って詳しく述べるので御期待下さい。