劇画家畜人ヤプー「宇宙帝国への招待」編

劇画家畜人ヤプー「宇宙帝国への招待」編

劇画最新版発刊に寄せて一一一残念ながら名乗り出て・・・天野哲夫(沼正三):1982年11月15日・記

三十年前、当時の『奇潭クラブ』誌に寄稿を始めた頃、匿名投稿の幾つかを取りまとめ、連鎖エッセーの形式で誌上に発表することを、こちらの売込みもあり、編集発行人の箕田京二氏より秘密の依頼を受けた。私は、それまで四つ五つのペンネームを使い分け、幾誌かに各様の寄稿をしていた。森下君が指摘した黒田史朗という名は、その中の一つにすぎない。それらとは別に、全く新しい沼正三という名前を作り( Ernst Sumpf に由来するといえば、森下君、お分りかな?)、適宜加筆潤飾し、統一的人格を作り上げるべく努力した。当時の読者には、一人の沼正三という名の投稿家が存在するように思われたことと思う。

私のペンネームが四つ五つありながら、当人は実は一人というのと、ただ一つの沼正三のネームに、実は四つ五つの、あるいはそれ以上の人格が蔵されていた、というのは、皮肉な対照であろう。実在の文献を装って実は作り話であったり、創作としているのに実は真の文献そのままだったり、沼正三は孫悟空のように、いたずら好きでもあった。虚と実の見境がつかないのである。

・・・続く