『血と薔薇』1969.No4

ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三・・・『血と薔薇』1969年 No.4より(3)

第一章 空飛ぶ円盤の墜落

二 クララと麟一郎

クララ・フォン コトヴィッツ嬢は麟一郎の級友であり婚約者であった。東独の名家に生れながら、彼女の両親はじめ肉親はことごとく戦争の犠牲者となり、彼女は孤児として育った。

父の友人たちの助けや遺産のおかげで、それでも生活には不自由なく、波乱のない学生生活を送ることができたうえに麟一郎を知り、最高のラブを得たことが何よりの仕合せといえた。でも残念なことに麟一郎の三年の留学期間は終ろうとしていた。

今日は名ごりを惜しむ二人が遠乗りをしたついでに、麟一郎が一人で泳いでいたところへこの椿事であった。

「だが、いったい、何だろう?」

それが問題だった。

「リン、妾、空飛ぶ円盤じゃないかと思うの」

それは、なるほど、空飛ぶ円盤に相違ないようであった。平たくつぶしたドーナツに、ピンポン玉をはめ込んだような格好をしていた。直径二十メートル、厚さニメートルほどの完全な円盤体で、その中央部、半径五メートルばかりの部分が球体状にふくれ上っているのであった。その外側はオレンジ色の金属でおおわれ、特殊なー種いいようのない雰囲気を外辺に漂わせていた。円盤の一部が先ほどの衝撃で破損したらしく、内部から柔らかい光が射し、どうやら動いているらしい内部の機械の一部も見えた。

麟一郎は、急に、素裸でいることが気になった。さっきは危急の際だった。クララが無事でいた以上、いくら婚約者同士といっても、裸では礼を失する。思わず赤面しながら、とっさにこの場をとって返し、服を脱いだ場所まで一走りして来ようとした。

その時、不意に機械の動きが止った。と同時に、突然のように軸が折れでもしたのか、機械の一部が横倒しになって、人一人通れるほどの空隙ができた。

クララはためらわず、その中に入ろうとする---。

・・・ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三:『血と薔薇』1969年 No.4より

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