『血と薔薇』1969.No4

ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三・・・『血と薔薇』1969年 No.4より(5)

第二章 円盤艇の内部

一 美女と侏儒

こわれた機械室の空隙をもぐって入ったところは回廊になっていた。そしてまっすぐな廊下につながっていた。どこにも照明装置らしきものは見当らないのに、廊下には明るい光が満ちていた。電子発行 による面光源を用いているのであろう。

むき出しの床はそれでもゴムのような弾力があり、麟一郎の裸の足裏に金属特有の冷たさも堅さもなく、最上等のジュウタンの踏心地であった。どんな材質のものが使われているのか、考える間もなく、自動装置による作動で中央室へのドアがひとりでに開いた。

まず二人の目に入ったのは、円形の、八畳敷ほどと思われる丸天井の一室であった。中央部に箱庭のような工作物を載せた円卓があり、その一隅におびただしい計器類が置かれた一角があるのは操縦席ででもあろうか、しかし人影はなかった。

戸口から二人は一歩踏み込んだ。見回すと、右手の壁面に沿って丸く豪奢な長椅子がしつらえてあり、その前の床に、女が一人倒れているのが目についた。ほとんど露出した豊満な太腿に始まり、格好のよい踝に終る脚線の見事さが麟一郎の目を射た。

はせ寄って、彼はさらに胆を奪われた。すばらしい美人なのだ。年は二十五、六歳か、背はクララと同じくらいであろう。

・・・ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三:『血と薔薇』1969年 No.4より

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