『血と薔薇』1969.No4

ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三・・・『血と薔薇』1969年 No.4より(4)

第一章 空飛ぶ円盤の墜落

二 クララと麟一郎

「待て、クララ!!」

麟一郎は叫んだ。

「ぼくが先に入るよ。中に何があるかわからん、危険だ。服を着てくるまで待ってくれ」

「だってーーー」

クララは、わざとのように少しスネたふうにいった。

「待ってられないわ、すぐにでも見てみたいの」

彼女は好奇心が旺盛であった。彼が、待て、といっても、その間に一人で中に入ってしまうだろうことは目に見えている。

麟一郎は苦笑した。

「いいよ、今ぼくが入るから」

麟一郎とクララ、この二人の運命は、この時を境に一変することになる。麟一郎がもし上着でも着ていたら、というのは後になっての繰り言にしかすぎない。彼が裸であったばかりに、とんでもない運命が二人を巻き込むのである。しかし、この時の二人に、そのことが予知できょうはずはなかったのである。

・・・ブラック・ポルノグラフィー 家畜人ヤプー 沼 正三:『血と薔薇』1969年 No.4より

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