「毎日が戦国時代」と考え、緊張感を持って生きる 大失敗した時こそ、ジタバタしないで腹をくくれば、道は開ける

松井選手の見事な復活も回復を焦らなかったから

勝利の鉄則:CIRCUS(2006.11.NUMBER-028)

勝利の鉄則:CIRCUS(2006.11.NUMBER-028)

---やはり修羅場になればなるほど、腹をくくることが大事になってくるんですね。

康 もう「なるようになれ」と思い込むんですよ。僕のボスだったのは「赤い呼び屋」と呼ばれた神彰。もう亡くなりましたけど、普通の日本人ではなかったね。例えば、当時のソビエト政府と交渉して「ボリショイサーカス」を呼んでくる。昭和33年当時、日本とソビエトは国交がないから、後ろ盾が何もないんですよ。それをあらゆる手段を使って引っ張ってきた。濡れ手に粟の大儲けだったんだけど、その後いろいろ失敗も重なった。起死回生を狙って世界的力ーレース「インディ500」を開催したんだけど、ここでも大損害をくらってね。地震で有名になった新潟の小千谷というところがあるでしょう。夜行列車に乗り込んであそこに逃げてね。そこの生ぬるい温泉に毎晩つかりながら、ションベン芸者を抱いて時間を過こしたこともありますよ。

---当たり外れの大きい商売ですからね。大損害を被って逃げていた時は、精神的にどんな状態で、何をしていたんですか?

康 あのね、ピンチに陥った時こそ絶対にジタバタしないことが大事なんですよ。じっとしているとだんだん回復してきて、道が開けてくるんだ。肉体的にも精神的にもね。ケガをした時も同じですよ。ニューヨーク・ヤンキースの松井選手がいい例です。彼がケガをした時、僕はある人を介して「絶対にジタバタしないで、じっとしているように」と伝えたんですよ。彼はもっと早いうちから動きたくてウズウズしていたんですが、それはやめておけと。復帰後に活躍できたのは、ジタバタせずに我慢したからですよ。

---例えば、アリを呼んだ時など、交渉相手が「これ以上、ビタ一文負けられん」って何度も言っているのに、康さんはそこからさらにディスカウントさせているじゃないですか。全営業マンが知りたいと思うんですけど、何か秘訣があるんですか?

康 それはね、相手の手の内を徹底的に読むんですよ。相手がその事案に対して、どの程度関心があるのかを見極めるため、あらゆる手段を使って調べ上げる。例えば、新聞記者や調査機関を使って相手の実態を探ったこともあるけど、詳しいことは言えないよ(笑)。ただ、相手が暴力団であれ、ビジネス上の取引先であれ、裏金をどのくらい持っているのか、銀座のどの店に女がいるのか、その女とはどういう状況になっているのかなどを徹底的に調べていった。記者や情報屋は総合的な情報を持っていないので、入手した情報をブレンドして整理する。そうしないと、相手にカウンターパンチを食らわせる情報として成立しないからね。これは非常に重要なことですよ。でも、最後に勝つのはやはり腹を決めた方ですよ。だって「目分にはこれだけしか払えるカネがない」となったら、その額まで下げてもらうより仕方がないじゃないですか(笑)。商談や社内のいざこざ、もっと大きな問題で言えば北朝鮮の拉致問題もそうだけど、結局、関係が壊れるのが腰が引けてしまうんですよ。でも、壊れるものは壊れるし、壊れないものは壊れない。だから、まずは相手の要求を読み取る。カネなのか名誉なのか。博打と同じで相手の手の内を読むわけだ。その上で腹を決める。おびえているだけだったら、どうにもならないよ。

・・・次号更新に続く