昭和な男たちの面白い遊び方とは:康芳夫が語る夜の紳士録(3)

康芳夫が語る夜の紳士録:BUBKA時代(2007.vol.02)

康芳夫が語る夜の紳士録:BUBKA時代(2007.vol.02)

---康さんから見た面白い遊び方っていうのはどういったものなんですか。

康 いろいろあるけど、要は、女とどう対応するかってことですよ。最終的には男女関係になっていくわけだけど、それまでの運びのうまさというか、緩急自在をわきまえた遊び方が一番ああいう所では面白いわけですよね。遊び方を知らない人はすぐに女を口説くとかなっちゃうじゃない?でも、勝ちゃんの場合は、女が自然に落ちてくるのを待つっていうかね、そういうような遊び方ですよ。

---例えば、峰子さんっていうのは祇園のナンバー1だったんですよね。

康 だから、その彼女が惚れちゃったっていうのは大変なことだったんですよ。最盛期の彼女っていうのは、”水も滴る女”っていう言葉がピッタリ当てはまる人でしたよ。芸者であんな人は僕も初めて見たなぁ。それぐらいの人でしたよ(当初、勝新のことがあまり好きではなかった彼女はあきらめさせるために「3年間毎日祇園に通ってほしい」と提案。ところが勝新はこれを実行して男を見せた)。だから、女の人と寝たいっていうのは男の人ならみんな考えることですよ。ただ、お座敷になった場合、たわみというか、余裕というか、男女関係を楽しむ場所ですからね。プロセスを楽しむのが妙味というか。そこに尽きるね。それがいまはすぐに実利的な話になっちゃって、いくらいくらでってことになるわけですよ。

---ゲスっぽくなっちゃったんですか。

康 ゲスっぽいというか、夢がないよねぇ。いまは銀座に行ってもすぐにそういう話になっちゃうし、女の子たちもそういう話に馴れちゃったからね。でも昔は違いましたよ。ラモールとか、エスポワールという店にはそれこそ白洲次郎を始めとして、財界人から作家までみんな来てた所ですから。小林秀雄も来てたし、川端康成も来ててね。川端康成なんかは僕の姉がやっていたラモールにいた女の子に惚れてね。ま、自殺の原因の一つになった女の子ですよ。とても面白い子で、川端康成と対等に話ができたんですよ。彼女は彼の『片腕」というちょっと面白い小説のモデルにもなっていて、政治・経済・芸術のどんな話にも対応できたから川端も夢中になったんでしょう。財界ではサントリーの佐治さんとかね、蒼々たる人が来てたわけ。もちろん、そこには女を口説くという目的があったわけだけど、一番肝要なのは会話が楽しめたからですよ。いまそれに対応できる女の子なんて銀座でも、お座敷でもほとんどいないですよ。余裕というか、間というか、そういうものが消滅して乾いた時代になったんだと思いますね。

---お客の側も迎える女の子の側も世知辛くなったんですね。

康 そうですね。確かに当時はメチャクチャな時代で、メチャクチャに金を持ってる人もいたんですよ。例えば、さっきのブランデーの回し飲みした話でも、必ずしも勝ちゃんが払うわけじゃなくて、誰かが「俺が払う」ってことになったんですよ。ところが、そのうちその人が新聞に出てきて捕まっちゃってたりね(笑)。今はそんないいかげんな話はまったくない。だから、まともになったいうか、スケールが小さくなったとは思いますね。

・・・次号更新に続く