全身虚業家(4):康芳夫
石原慎太郎氏が今、やっきになって招聘を実現させようと奮闘するオリンピックに、その昔康さんがロス五輪の放映権をテレビ朝日と組んで略奪しかけた一連の騒動を思う。昨年は戦後最大の奇書、反天皇制文学の極北「家畜人ヤプー」の著者沼正三氏がお亡くなりになり、ヤプー全権プロデューサーでもある康さんの身辺がにわかに騒がしくなった。テレビを観ていれば、その昔これも康さんが仕掛け、日本を席巻した人間とチンパンジーの間の子”オリバー君”の餌係を務め、康さんの虚業家ぶりを間近で目撃したテリー伊藤氏が創りあげた、バラエティの世界が広がっている。
小雨パラつく銀座に、美女とリムジンから姿を現した康芳夫大先生。今まであらゆるメディア、人々が幾度となく繰り返してきたであろう質問を、今一度投げかけた。
「康さん、これまで、なんでそんなことをしてきたのでしょうか?」
「それは、ヒマつぶし、、んん、間違いない」
神をも弄ぶ男の、ヒマつぶし。
現代にもどこかにあるはずの、虚実皮膜の狭間。
勝新とも裕次郎とも飲み仲間だった康さんと同じ時代を生き、空気を吸い、同じ場で盃を口にすることで、それを見極め、操る術が身に付くだろうか。
・・・了