『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く

『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く

沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く(4)

---話が『家畜人ヤプー』と離れますが、元々フランスで、どのような出版活動をされていたのでしょうか。

ヴィアレ 英米文学が専門で、アメリカの作家の翻訳出版からはじめました。Kathy AckerやPeter Sotosなど、基本的には自分で翻訳することが多いですね。それからアジアの作家の翻訳もはじめています。サドやバタイユなどの芸術家の後継者と呼ぶべき作家を探しながら出版活動をつづけています。日本人の作家は今回がはじめてのことです。作品も長大であったし、内容的にも濃いものでしたから、わたしにとっては特別な一作であり、宝物を発見した気持ちです。この先又、このような作品を見つけることができるのか、今は少し心配しています(笑)。

---日本では文学離れ、本離れということが言われていますが、フランスではいかがですか。

ヴィアレ フランスでも、文学というものが売れません。年々、部数も減ってきている。ある意味で、小説は、詩と同じような位置にあるのではないでしょうか。もちろんベストセラーになる本はあります。そしてまったく売れない本があって、そのあいだに位置する本が、ほとんどない。いわゆる文学の古典と呼ばれるものも、学校などでは読まれていると思いますが一般的には読まれていないのが現状です。一九七◯年代に、ある有名なパブリッシャーが、「難しい本でも、数千部は売る」ということを言っていましたけれども、今や百部単位の話になってきていますね。出版社も経済的な効率ばかりを考えていますから、売れない本は出版しない。もし本当に自分の好きな本を出版したければ、独立するしかありません、わたしのように(笑)。

---最後に、今後、どのような出版活動をされていくご予定でしょうか。

ヴィアレ これまで日本人の作家をほとんど知りませんでしたが、沼正三さんのような作家が日本にいることに大変驚きを覚えました。もっと多くの面白い作家が日本にいるのではないかと想像しています。それを今後探していきたいと思っています。

・・・次回更新【沼正三著『家畜人ヤプー』を出版したローレンス・ヴィアレ氏に聞く】了