全身虚業家(1):康芳夫
康芳夫。
知っている人には、この名前そのものがすでにムーヴメントである。時系列も関係なく、思いつくまま、その黒く怪しく光る功績を羅列してみる。
ソニー・ロリンズやトム・ジョーンズらミュージシャン達の招聘。当時、世界的最強のアイコンだったモハメド・アリの招聘。そして今や伝説であり、現在を席巻するあらゆる総合格闘技戦の先駆けとも言えるアントニオ猪木対アリ戦の、影の調整。さらに、これが実現しなかったことを猪木氏も未だ残念がられているという、ウガンダのアミン大統領対アントニオ猪木、レフリーにモハメド・アリという空前絶後の試合の画策。康さんは試合の調整のためウガンダまで赴き、”黒いヒットラー”またの名を”人食いアミン”が政敵を倒した後、見せしめに切った首が幾つもそのまま吊るされ、大きな雪だるま状になっていたという巨大冷凍庫にまで行かれている。アミン大統領のモハメド・アリへの敬意や、自身が1軍人であった時に体で知った日本軍の強さへの敬意から話は本当に実現へと動き、日本サイドでは康さんや猪木氏が、アメリカサイドではアリ等が同時記者会見を開くまでこぎつけた。独裁者として悪名鳴り響いていたアミン大統領との闘いは世界的注目を集め、どちらかというと予想以上に非難の嵐だったことでアリも腰が引け気味だったらしいが、自国におこったクーデターに敗れアミン大統領がサウジアラビアに亡命してしまったため、話は流れた。2003年にアミン大統領が亡くなった際、康さんと猪木氏は弔電を打っている。
・・・次号更新に続く