ネッシー探検隊に三千人の応募者が殺到

康芳夫:花田紀凱(リベラルタイム MAY 2007 vol.72 より)

康芳夫:花田紀凱(リベラルタイム MAY 2007 vol.72 より)

ニューヨーク・タイムズの記事のタイトルは「When an Eastern Dreamer Hunts a Western Monster,Shall the Twain Ever Meet ?」

こんなふうに書き出されていた。

<昨年秋ネス湖の怪獣を求めて探検隊を組織、ネス湖に乗り込んだ日本の夢想家・康芳夫<中略>彼の美しい髪は肩より下までのび、彼の表情は穏かで、自信に満ちあふれていた。彼の目鼻立ちのハッキリした顔、なかでもグッと鼻筋の通った鼻は、さながらスー族の勇者のような威厳を感じさせる(以下略)>

康芳夫さんを一躍世界的プロモーターにしたイベントが二つある。ひとつはカシアス・クレイ(後にモハメド・アリと改名)を日本に呼んだこと、そして、もうひとつが、このネッシー探検隊である。

スコットランドのネス湖に棲息するといわれる怪獣ネッシーは有史以来、多くの人に目撃され、写真も撮られている。

このネッシーを生け捕りにしようという計画で、総隊長は石原慎太郎さん。予算は約二億円。隊員は十人。学歴、年齢、性別問わずで募集したらなんと三千人もの応募があった。

記者会見で康さんは例によって吹きに吹いた。

「わたしの想定ではネッシーの体長は象の一倍半、結局、麻酔銃、電気鈷で仕止める。捕獲したらネッシーの所有権についてイギリス政府と交渉することになるでしょう」

イギリスのマスコミはいっせいに反発した。

<日本人はわれわれのネッシーを狙っている。イギリスの時計、テープレコーダー、ラジオ産業を追いつめ(中略)今度はネス湖の怪獣を探しに潜水艇まで持ってスコットランドにやって来ようというのだ>(ガーディアン紙)

むろん康さんはそんな批判は歯牙にもかけず、実際にネス湖でネッシー探しを実行してしまった。

当然ながら(?)、ネッシーは発見されなかった。

が、これくらいでめげる康さんではない。

<私の心は自分でも意外なほど明るかった。(中略)私はホラひとつで二億円近い金を動かしたのだ>

・・・次号更新に続く