『血と薔薇』創刊号 Oct.1968No.1

『血と薔薇』
エロティシズムと残酷の綜合研究誌
澁澤龍彦 責任編集
創刊号 Oct.1968No.1

All Japanese are perverse

三島由紀夫

私はこの小文で、サド・マゾヒズム、フェティシズムその他の用語を全く便宜的に使ったことを断はっておかなければならいない。

ウィーンの性科学者たちが作ったこれらの用語は、便利ではあるが、真の活きた実態を何ほどもつかみはしない。それらの用語を通じてのみ人間の性に触れようとする男は、意味論の森にさすらひながら、つひにはもっとも下劣で卑賊な「分析家」になるのである。人間の性の体験的解明のためには、われわれはつねに、フロイト以前の世界に身を置く努力を忘れてはならない。病名のないところに病気はなかった。ノイローゼというふ病名ができるまで、人々は決してノイローゼに罹ることなどなかったのである。よしんば狼憑きに罹ることはあっても!

・・・All Japanese are perverse・・・了