勝新のNy初体験はホールドアップ!:康芳夫が語る夜の紳士録(1)

康芳夫が語る夜の紳士録:BUBKA時代(2007.vol.02)

康芳夫が語る夜の紳士録:BUBKA時代(2007.vol.02)

---今回は、康さんがこれまでお付き合いしてきた豪快な方々についてお聞きしたいと思ってます。題して康芳夫の夜の紳士録という感じです。

康 そういう話ならやっぱり勝新太郎でしょうね。勝ちゃんほど面白い男はいないでしょう(笑)。僕が紹介してモハメド・アリともすぐに仲良くなりましたからね、彼は。それで勝ちゃんはアリのドキュメント映画を撮って公開したんですよ。結果的にはあんまり当たらなかったけど。

---『黒い魂』ですね。

康 そうそう。あの撮影で勝ちゃんはアメリカを回ったわけですよ、アリの試合を撮るために。最初はニューヨークで、勝ちゃんは当時彼女だった祇園のナンバー1芸妓の峰子さん(岩崎峰子。勝新太郎との関係については『芸妓峰子の花いくさ』講談社刊で詳述)と一緒に来て、僕が2人を博打場に案内したわけ。いまは隣の州でオープンになっちゃったからなくなっちゃったんだけど、昔はアンダーグラウンドの博打場は盛んだったの。ところが、ちょうどその日に限って警察の手入れを食っちゃってね。いきなり天井をバンバンッと撃って、お客は全員壁際に立たされて。峰子さんは本当にブルッちゃってましたね。

---いや、それはブルっちゃいますよ(笑)。

康 ただ、それはフェイクというかね、当時のニューヨークのお巡りっていうのは腐敗のピークで、経営者のチャイニーズマフィアが袖の下を渡すと帰るわけですよ。あの頃お巡りさんの給料が一ヶ月に千ドルぐらいだったのかな。それが一回博打場に来ると2千ドルぐらい巻き上げていくから大変な小遣いになる。それで、彼らは週に一回は来るからね。そんなわけで、勝ちゃんのニューヨーク初体験はホールドアップ(笑)。

---素晴らしいですね(笑)。

康 勝ちゃんはそれすらも楽しんでいましたよ。いまでもそうだけど、当時のニューヨークのお巡りは腐りきってて副署長がそういった警官の元締めになってたくらいだったですから。あと麻薬も。

---麻薬と言えば、勝さんはその時はどうだったんですか。

康 それはまあ、個人の自由だから(苦笑)。ただね、信じがたいんだけど、博打場には麻薬の陳列ケースがあって、好きなようにヤクが買えるわけですよ。お巡りもそれは見て見ぬふり。それどころか、その上がりも取るわけで、もうメチャクチャな話ですよ。だから、そこで勝ちゃんがどうしたか、こうしたかって話は僕の記憶も定かではないと(笑)。

---推して知るべしって感じですね。博打のほうの張りっぷりはどうでしたか、勝さんは。

康 楽しむほうでしたね、そんなに額は大きくない。彼が好きだったのは米粒博打。これはチャイニーズマフィアの博打場にしかないんだけど、米粒を一つずつ拾っていって最後の粒の色が白なら白、黒なら黒を取ったほうが勝ちっていうね。そういうのが彼は好きでしたね。カードはバカラが好きですよ。あんまり手の込んだ博打は好きじゃなかったね。ポーカーでもハイ&ローとかですから。それを彼は一時凝ったんだけど、やっていくと深いゲームだからね、結局単純な男だから飽きちゃって(笑)。ま、飲む打つ買うはハイパープロでしたよ。

・・・次号更新に続く