虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝/康芳夫(著)より

大西武サーカスの失敗(1)

大学を卒業していきなりまかせられたソニー・ロリンズやボリショイサーカスの仕事など、いろいろなアートフレンドアソシエーションの企画をこなし神彰の右腕として呼び屋稼業の魅力にどっぷりとひたりはじめた私だったが、飛ぶ鳥を落とす勢いだった神彰のアートフレンドアソシエーションの経済状況も、その頃ちょうど徐々に変化を見せはじめていたのだった。

毎晩、銀座や赤坂での豪遊は相変わらず日課として続いていたが、そんな派手な生活とは裏腹に資金が本当に底をつきはじめたのだ。

呼び屋の仕事はとにかく不安定きわまりない。しかし、同時に一発勝負の逆転ホームランも打てる。まさに、どこかの弱小プロ野球チームのように点を派手にとられるが、最後に劇的なサヨナラホームランを打つ力も秘めているのだ。一発逆転した、その瞬間の快感と興奮は、一種の麻薬のようなものだ。その快感でそれまでの連敗の苦しさが吹っ飛んでしまう。

いわゆる、事業家としての経営者が安定的な会社の利益を上げて味わう優越感とはまったく異なる、得体の知れない自己陶酔の世界にひたってしまうのだ。

だから、そんな一発屋ばかり集まったチームは絶対優勝できない。しかし、そんなことは承知のうえで我々は一発逆転を狙って勝負を続けるのだ。

・・・次号更新【『虚人魁人 康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝』 official HP ヴァージョン】に続く

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