正統なる虚業家 康芳夫(2):マフィアとフィクサーとの”危険な”駆け引き

正統なる虚業家 康芳夫:実話 裏歴史 SPECIAL VOL.8(2011.12.05)より

正統なる虚業家 康芳夫:実話 裏歴史 SPECIAL VOL.8(2011.12.05)より

「トム・ジョーンズに関しては、僕に仲介した連中のなかに、マフィアと関係した人間もいてなかなか面倒でした。特に、彼の場合、ラスベガスでしょっちゅうショーをやってるでしょ。そうすると、ラスベガスのマフィア、イギリスのマフィア、そして日本の連中が微妙にからんでくる。それぞれに落とし前をつけなければいけない。やっかいでしたよ。まあ、今はそういった関係もキレイになってますけどね」

都内のとあるホテルのバー、康氏はディープな内容をさらりと話す。氏自身の独特の雰囲気とも相まって、初手から筆者は、イリュージョンに引き込まれるような錯覚すら覚えた。さらに氏が続ける。

「糸山英太郎っているでしょ?彼の一派もトムを呼ぼうとしていた。それで、僕に対して横やりを入れてきてね。まあ、やっかいな言いいがかりをつけてきて、君たちは手を引けってことだね。もちろん、糸山氏本人が言ったワケじゃないけど、糸山グループの人たちが入れ替わり立ち替わりきてね・・・また、トム・ジョーンズを呼ぼうとしていた別のプロモーターたちもいる。それらも激しく動いた。彼らのなかには、電通の責任者と親しくて、テレビの放映権を渡さない、(放映を)させないという。そういうプレッシャーは多々ありましたよ」

糸山氏と言えば、元自民党の国会議員として知られる。一方で、実業家であり、かつフィクサーとも呼ばれた故・笹川良一(行年・96歳)の姻戚。真偽のほどは定かではないが、仕手筋にも名前があがったことがある大物だ。その人物が、なぜトム・ジョーンズにからんでくるのか・・・

「彼(糸山)は興行界に乗り出そうとしていたワケよ。で、かつてミック・ジャガーを呼ぼうとして失敗した。それで、トム・ジョーンズに切り替えたらしいんだね。まあ、僕らに関係ない話で、糸山氏がこようと僕はそんなことには動じないから」

こともなげに語る康氏だが、トムの来日までには、まだまだ多くの紆余曲折があった。公演のチケット代を巡りトム側からクレームがついたのである。

・・・次号更新に続く