ニューヨ―ク・タイムズ:康芳夫

THE NEW YORK TIMES

“You cannot,”says the author,”make a place for yourself in the monster-hunting world without at least one sighting of Nessie,preferably accompanied by photo-graphs taken with the wrong film in bad light.”At top,a Japanese diver in Loch Ness.Ahove,Yoshio Kou beside the lake.At right,a 1961″photograph.”

どんな物語を好むかで人生は決まる

両親の日中戦争をめぐるいさかいと、GHQの奉安殿への破壊活動が私に啓示してくれた、人の世が根本において抱えるフィクション性。

フィクションとはまた物語のことでもある。物語は人がいる限りどんな現実にも必ずある。それは、どんな人生にもその人生を描ける物語があるということだ。そして人は自分の物語がないと前へ進めない。たとえ、それが悲劇であろうとみすぼらしいものであろうと、一つの物語のように生きていくのが人生なのだ。王様には王様の、乞食には乞食の物語があるのだ。

そんなふうにすべてがフィクションであり、物語だと思えば、人は底の底から自由になれる。お金でも人間関係でも会社でも仕事でもそれらを揺るがない実体だと思えば、人の精神はそれに固定され縛られ、どんどん不自由になっていくばかりだ。

・・・以上、虚人のすすめ―無秩序(カオス)を生き抜け (集英社新書)より抜粋