「覆面作家は高裁判事」東大卒のエリート:東京新聞(1982年(昭和57年)10月2日(土曜日))

戦後の文学界に衝撃 マゾの奇書「家畜人ヤプー」 「覆面作家は高裁判事」東大卒のエリート−1

昭和四十五年の単行本発行と同時にロングセ一ラーを続け、戦後文学界に衝撃を与えた奇書「家畜人ヤプー」の作者は長らくナゾとされ、関係者の間で熱心な作者探しが行われているが、二日発行される「諸君」十一月号に、この覆面作家は、東京高裁の現職裁判官倉田卓次氏(六〇)である旨の記事が掲載された。同書は「難解な観念小説」との評価の一方、性錯倒のマゾヒズムの世界を主題にした小説だけに、「作者はエリート裁判官」とする同誌は話題を呼びそうだ。

「家畜人ヤプー」は、昭和三十一年からSM雑誌「奇譚クラブ」に連載され、四十五年、単行本になるとベストセラー。現在文庫本文にも収録されている。作者は「沼正三」と称されているが、実際には実名のわからない覆面作塚。故三島由紀夫氏が「奇書」「観念小説の最高傑作」と激賞したのは有名。さらにテーマが「マゾヒズム」であることもあって、作者の正体についてはナゾがナゾを生んできた。

・・・次号更新に続く