◆異相の呼び屋・康芳夫:なぜ、康芳夫は自らペテン師になったか
「欺してごめん」安部譲二(クレスト社・1993・12)
【謎のプロモーター】
康芳夫は、稀に見る異能の男だ。
執筆に際して、取材し資料を調べるうちに、康芳夫の他に類のない、雄大にして奇抜な発想を知った私は、感嘆してこの男こそ天才の名にふさわしいと、信じるに至った。
昭和四十四年『池田大作を裁く』『松下幸之助を裁く』『宮本顕治を裁く』出版
昭和四十五年『家畜人ヤプー』出版
昭和四十七年「カシアス・クレイ対フォスター、世界ヘヴィー級タイトルマッチ」プロモート
昭和四十八年「トム・ジョーンズ東京公演」プロモート「ネス湖探検隊」を派遣
昭和四十九年『虚業家宣言』出版
昭和五十一年「モハメッド・アリ対アントニオ猪木、格闘技世界一決定戦」プロモート「人類猿オリバー」招来
昭和五十二年「ベンガル虎対唐手」を企画、実現せず
昭和五十四年「アミン大統領対アントニオ猪木」を企画、実現せず
昭和五十八年「ノアの方舟探検隊」を組織
思い出すかぎり康芳夫は、こんなユニークというか、呆れた仕事をしている。
それに最近、例の沼正三著「家畜人ヤプー」の出版記念会を企画演出した康芳夫は、SM女と男を集めて、鞭でひっぱたき小便をひっかけるという凄まじいショーをやってのけたことも、記憶に新しい。
康芳夫には、巨きな謎の部分があって、これを解明するのに、私はてこずり、試行錯誤を繰り返した。私は昭和五十年時点で、すでにこの謎を解こうと試みたが、獄中の数年を費やしても結論が得られなかった。
なぜ康芳夫は、トム・ジョーンズ以前とネッシー以後では、明確に方針を変更したのだろう。ネッシー以後は、自分をことさらいかがわしく怪しげにした。自ら望んで、山師やペテン師に類する評価を得るのだが、それには理由と目的が必ずあるはずなのだ。
・・・以上 2015.10.26発行 NO:0026 虚実皮膜の狭間=ネットの世界で「康芳夫」ノールール(Free!)より抜粋