罰あたりパラダイス：福田和也（文）・・・4

SPA！1998年2月18日号より

ちょっと僕らの遊びと康さんのとはスケールが違うけれど、毎日の仕事といった支えをもたない、持つことの出来ない人間の、世間とは逆向きの勤勉さというものがあり、その勤勉な遊びという奴を貫くのは、なまなかな事ではない。改俊する放蕩者がいかに多いことか。

「でも、町田さんの読者は、どうですか。その辺は。まぁ、それ以前に、編集者の方が問題か」どこというと、町田さんに迷惑がかかるので言わないが、オレも大嫌いな文芸誌、小役人根性という文学とはもっとも遠い根性で凝り固まった某『群像』なんかは本当に質が低い。こういう奴らは一生、町田さんの小説の豪奢さは分からないだろう。

「芥川も候補にしないのはヒドイですね、町田さんやリービ英雄は候補にして当然なのに」

「いや、僕は、リービさんて顔が怖いから、恐れてたんですけど、前に週刊誌に部屋の写真が載ってたんですよ。そうしたら、僕ももらったんですけど、野間新人賞の正賞は、野間さんかなんかのブロンズ像かなんかで、何だこれはっていう物なんですけど、それをリービさんはきちんと柱に懸けてるんですね、それを見て、この人はいい人だと思いました」。本当に町田さんは、人をよく見ている。

「いゃ、この車、先週はマライア・キャリーが乗ってたんですよ」

運転手さんが、突然、感に堪えたように言った。先週マライアで、今週は康、町田、福田。東京というのは、やはり変な街である。

・・・了