日本神話を脱構築する:畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之・・・その21
イギリス人クラークらしい典型的な帝国主義的植民地主義が『幼年期の終り』全編を彩っているのは、かつて英文学者・大橋洋一氏も指摘したとおりである。「クラークの場合、強力な権力による統治が平和を実現すると考える点において帝国主義的であるし・・・・・・いくつかの徴候的場面では、未開・野蛮に対する差別意識が露呈する。・・・・・・この作品(『幼年期の終り』)がいまなお読者を獲得しているのなら、帝国主義的ユートピアはいまもなお命脈を保っているはずであり、その保守反動性はもっと徹底した分析を必要とするだろう」(SFセミナー’87年講演「アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』とSFの政治学」レジュメ、一九八七年)。
ただし、人類がやがて超進化してしまうという本書の物語学上、結果的に最も悲壮な表情を示すようになるのは、じつは一貫して上霊(オーバーマインド)の下僕でしかないオーバーロード種族のほうだ。彼らのひとりはこう語る。「われわれはつねに、義務を−−−上から課せられた義務を遂行する管理人でしかなかった。・・・・・・われわれは産婆です。しかしわれわれ自身は、石女(うまずめ)なのだ」(『幼年期の終り』邦訳、二六七~二六八頁)。
・・・畜権神授説・沼正三『家畜人ヤプー』と日本神話の脱構築:巽孝之 より・・・続く
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