人格は代理できない(1)

『諸君!』昭和57年(1982年)12月号:「家畜人ヤプー」事件 第二弾!倉田卓次判事への公開質問状:森下小太郎

あなたの犯した唯一最大のミスは、天野氏に人格の代理権まで与えたことなのだ。

こうしたことを知ってか知らずか、元最高裁長官・藤林益三氏(日本法律家協会会長)は、「・・・・・・本人が匿名を希望して文通したのを明かすというのは、匿名信義に反しますね」とコメントしている(週刊現代十月二十三日号)。

仮に私の友人にA氏なる人物がいたとしよう。もちろん私はA氏の本名も生業も知っている。そのA氏が、匿名を希望して私と文通したとする。これを公にするのは、なるほど"匿名の信義"に反するだろう。が、私は沼氏から本名も生業も告げられず、いわんや匿名の約束もなかったのである。彼との間に"匿名の信義"なるものが存在しようもない。藤林の言は的外れもいいところである。

倉田氏よ、文章を世に問うということは、世に問うたその瞬間から「公の行為」なのである。そこには当然、著作権などの権利が付与される代わりに、責務も生じる。

代理人に人格まで代理させないことはそのひとつ、さらには、沼正三名であちこちに文章を書き散らすことを許さない、これもまたあなたの責務ではあるまいか。

・・・次号更新【『諸君!』昭和57年(1982年)12月号:「家畜人ヤプー」事件 第二弾!倉田卓次判事への公開質問状:森下小太郎・・・連載30】に続く