『潮』昭和58年(1983年)1月号
死者の国から呼び戻された幽霊・・・・・・(6)
印税は誰が取り、確定申告はどう処置されたかは、調べればすぐに分る基本的な調査であるはずである。それを、印税が代理人を経てK氏に渡った可能性ありとか、或いは、代理人・天野が横領、かつ脱税の疑いありとか、著作権問題に疑義が残るとか、いきなり推測のみで言い切る暴挙(或いは愚挙)に森下君や堤君が出るとは、いくら『諸君!』の誌運を賭けての一発勝負とはいえ、これは確かに失礼極まりない。堤君も森下君も、いってみれば私と旧知の間柄である。結論が出され、第一弾の『諸君!』十一月号が校了になってから、何とはなしの意味不分明な電話を堤君は私の勤務先へかけてきたことはある。何故正当に、これこれと、面と向っての私への取材を怠ったのか、こんなハンパな独断は文藝春秋という一流出版社の品位と信用を、自らおとしめる妄動としか、言いようがない。
・・・次号更新【「家畜人ヤプー」贓物譚(ぞうぶつたん)・・・『潮』昭和58年(1983年)1月号より・・・連載14】に続く