”総統”と呼ばれるにふさわしい男(1)

滅亡のシナリオ:ヒトラー独特の敬礼。小指が開き、親指が内側に曲がっている

プロデュース(康芳夫)
ノストラダムス(原作)
ヒトラー(演出)
川尻徹(著)精神科医 川尻徹

「さて、今度はこいつを見てくれ」

中川は驚いた。これまで見たのとはまったく別人の、鋭い鷲のような目つきのヒトラーが写っていたからだ(写真⑮)。

「驚きました。全然別人ですね!」

「そうだろう。目は鋭く、口許は引き締まっているね。表情から見て意志が強く、知的水準も高そうだ。これぞフューラー ーーー指導者、総統と呼ばれるにふさわしい男ではないか」

「まったくです。これが本当のヒトラー、つまり”実体”ですね?」

「そうだ。・・・・・・それと、敬礼の仕方を見てほしい」

「なるほど。実体は、そんなに上に挙げていませんね」

「しかも、親指が内側に曲がっているだろう。これはフューラー独自の形なんだ。ところが小指が離れて、薬指との間に隙間ができているな。これも特徴でね、どうやら右肩運動障害から尺骨神経障害をきたしているらしい。そうすると、こんなふうに小指が離れるわけさ」

「偶然、こんな形になったわけじゃないんですか?」

「そうじゃない。次の敬礼の写真も見てごらん」(写真⑯)

「ははあ。これも小指が離れ、親指が内側に曲がっていますね。腕もそんなに上がっていませんし・・・・・・」

「体格も闘士型だろう。次も、敬礼の写真だが、表情がよく分かる」(写真⑰)

「ええ。口許が引き締まっているし、帽子もピシッとまっすぐにかぶってます」

「これで見ると、部下に比べて敬礼の角度がずっと低いことが分かるだろう」

「はい。後ろにいる部下の顔も真剣ですね」

・・・・・・・・・次号更新【”総統”と呼ばれるにふさわしい男(2)】に続く