沼正三は私である・・・・・・(3)

『潮』昭和58年(1983年)1月号:「家畜人ヤプー」贓物譚(ぞうぶつたん)

私の経歴は漠としてとらえどころがない。曾て一時期、川島芳子とまではいかぬが、満蒙荒蕪の山奥に流れ住んだ青春の一時期は、誰も検索出来得ぬ靉靆(あいたい)たる彼方に霞み去っている。つまり、私はいかがわしい人間なのである。ニセモノにふさわしい人間である。ニセモノとしての侮蔑を身に受けるは、マゾヒストとしての立場からは一種のこれが法悦ともいえる。だが、K氏に累が及ぶとなれば事情は違ってくる。まるで犯罪者のような、極悪の晒し者のような『諸君!』でのK氏の写真の扱いは何たる非礼!強い憤りを感じずにおれない。それもこれも、k氏が私との交際あったことから派生したことを考えれば、K氏には会わせる顔もなく、申し訳なさいっぱいで、言いようがない。万止むなし!斯くなるからには、私としても、この間の事情をいちおうは明らかにしておかなくてはなるまい。

・・・次号更新【「家畜人ヤプー」贓物譚(ぞうぶつたん)・・・『潮』昭和58年(1983年)1月号より・・・連載4】に続く